被爆者なき後、どう継承 被団協全国代表会議 深刻な高齢化浮き彫り 各地で解散相次ぐ [長崎県]

被団協全国都道府県代表者会議で、運動の継続について議論を呼び掛ける木戸季市事務局長=10月17日、東京都千代田区
被団協全国都道府県代表者会議で、運動の継続について議論を呼び掛ける木戸季市事務局長=10月17日、東京都千代田区
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 被爆者唯一の全国組織、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)。昨秋、東京都内で開かれた全国都道府県代表者会議では、活動の継承を議論する場で一部の団体が解散の意向を表明するなど、深刻な高齢化の実情があらためて浮かんだ。今後、核兵器廃絶を目指す理想は誰が訴えていくのか。被爆地の外では活動が細り、被爆者なき時代が目の前に迫っている。

 「熱気あふれる議論が続いている中で、こういうことを言い出してもいいのか迷うが…」

 新潟県原爆被害者の会の西山謙介事務局長(70)は慎重な前置きをした上で、会の解散を検討していることを明らかにした。

 「1人でも被爆者がいる限り団体の旗は降ろさないと言ってきたが、十分な活動ができなくなっているのに存在意義があるのかと考えるようになった」

 会議には全国の被爆者や被爆2世など約80人が出席。各地の代表者が運動への意気込みを語り、拍手が巻き起こっていただけに、会場は静まり返った。

 西山さんは目に涙をためて続けた。

 「苦しい闘いを続けてきた被爆者のことを思うと極めてつらい決断。解散が1年後か2年後か5年後かは分からないが、突然の解散でみなさんに迷惑を掛けたくない。来年から会を閉じる準備をしていく」

 新潟県内の被爆者は92人(昨年3月末現在)。被害者の会の会員は約30人で、実質的に活動しているのは被爆者数人と、西山さんら被爆2世、支援者など計10人程度。会費収入は年間6万円ほどしかなく、西山さんの自宅を事務所にしている。毎年開く原爆死没者の追悼式には行政から補助金が出るものの、活動のたびに会員が手出しで費用を工面するなど、ぎりぎりの状態が続いているという。

 「さまざまな工夫をし、犠牲も払ってきた。新潟の反戦反核のとりでになると突っ張っていたのだが…」

   §    §

 ここ数年で、奈良、滋賀、和歌山、栃木と各県被団協の解散が相次いでいる。比較的被爆者の多い九州でも、県被団協を支える市町村の支部が大きく減少している。事務作業を担う役員のなり手不足や会費収入の減少などが主な理由だ。

 被爆者健康手帳の所持者の約3割は広島、長崎両県外にいる。各地の被爆者たちは語り部活動などを通して、原爆被害の実相を全国で共有する重要な役割を担ってきた。ただ、原爆投下から73年がたち、東北や北陸などでは被爆者が数十人まで減った。

 「間もなくゼロになるが、1人になるまで訴えを続けていく」。秋田県被団協の佐藤力美事務局長(80)は力を込めた。県内の被爆者は19人(同)。被爆者がいなくなっても、遺族などに呼び掛けて死没者慰霊祭は継続していく考えという。

 他にも「次にやる若者を育てないといけない」(岩手)、「被爆者と2世がチームを作るべきだ」(福岡)など、被爆2世の運動参加に期待する声が上がった。ただ一方で「2世であることを隠したい人もいる」「仕事や介護で継続した活動ができない」などの意見も寄せられた。

 被団協の木戸季市事務局長はこう訴えた。

 「被爆者だけの運動はもう事実上できなくなった。被爆者がいなくても被団協を継続することはあり得るのかどうか考えなくてはいけない」

=2019/01/10付 西日本新聞朝刊=

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