43歳元SE、充実の漁師見習い 佐世保市宇久島 震災機に関東からIターン [長崎県]

釣り上げたヒラスを運ぶ山小田博仁さん
釣り上げたヒラスを運ぶ山小田博仁さん
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 五島列島北端の佐世保市宇久島で漁師を目指している元システムエンジニア(SE)がいる。大阪出身の山小田博仁さん(43)。東京で仕事をしていたが、東日本大震災を機に人生を大転換。「自然と触れ合って、人間らしい生き方をしたい」と島暮らしを始めた。

 山小田さんの朝は早い。午前4時に起き、夜明け前の港を出る。「親方」と呼ぶ船長の漁船で沖へ。一本釣りで仕留めたのはヒラスにブリ、タイ。2年前の8月に宇久島に来てからの漁師見習い。漁場探しや針付けなどの基本を親方から学ぶ。「日々勉強です。毎日が楽しい」と日焼けした顔で快活に笑う。

 大阪府岸和田市に生まれ、地元の専門学校を卒業。SEの仕事を始め、銀行の給与システム構築にも携わった。夜遅くまでコンピューターの前で格闘する日々。「金を稼いでなんぼ。好きでない仕事でもこなした」と振り返る。

 2011年3月11日の東日本大震災。山小田さんは東京・新宿の会社にいた。夜中に自宅に帰ることはできたが、津波で家々が流される被災地の映像を見て恐怖に襲われた。自分の中で何かが変わっていった。

 「世の中が簡単に壊れる様を見た。金、金ばかり考えていたのがばかばかしくなった。自給自足的な生き方をしたい。もっと人間らしく生きたくなった」。しばらくして会社を辞めた。

 千葉県で農業をした後、宇久島出身の友人のつてで島へ渡った。

 いま、充実の毎日を送っている。漁を終えると、自宅に戻り、農作業もする。庭にオクラを植えた。近所に飼われている長崎牛の鳴き声も聞こえる。「こんな毎日が最高です。東京の友人がこんな僕を知ったらびっくりしますよ」。スマートフォンはほとんど使っていない。

 高齢化が進む漁業にあって、43歳の新人漁師は地元漁協で最も若く、期待されている。近い将来、自分の漁船を持って漁をしたい。

 「ここで生きる覚悟はできました。島の人間になりたい」

=2019/01/16付 西日本新聞朝刊=

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