「無名の市民」が参加 松浦市の総合計画作り 未来会議メンバー無作為抽出 [長崎県]

人口が少なくなっても幸せに暮らせるには-。老若男女が対等な立場で話し合った=2月16日、松浦市
人口が少なくなっても幸せに暮らせるには-。老若男女が対等な立場で話し合った=2月16日、松浦市
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 「市民の声を行政に反映させる」。自治体は当たり前に言うが、市民はそれほど実感していない。そんな現状を変えるべく、松浦市は総合計画作りに新たな手法を取り入れた。キーワードは「多様な市民の対話」と「無作為抽出」。他の自治体にも参考になる実践である。

 老若男女がごちゃ混ぜ。制服姿の高校生もいる。昨年10月に発足した「松浦未来会議」。総合計画の下地として、市民が望むまちの将来像を描く場だ。

 今年2月まで4回開き、毎回100人近くが参加。4人前後のグループで「これまでの10年で市が取り組んで良かったこと、もう少しだと思うこと」「今後の10年を考えるのに大切な視点」などを話し合った。

 松浦市は会議の委員を二つの方法で選んだ。一つは公募。全戸にチラシを配り、40人の希望者を募った。

 もう一つは住民基本台帳からの無作為抽出で、10代から70代までの2千人に案内を送った。他地域の例から応諾するのは3%、60人程度とみていたが、希望する返事を寄せたのは90人。予想以上の反応だった。

 自治体の総合計画は10年程度で取り組む政策をまとめる。有識者や知名士を集めた審議会で素案を議論することが多い。松浦市もそうだったが、2020年度からの新たな計画はあえて無名の市民を加えた。

 「以前の総合計画は総花的で、市職員でさえ目にすることが少なかった。今度は松浦市の未来像を市民で共有したい。手に取って読める冊子にしたい」と政策企画課の小沢智彦さん。

 「市役所の総合計画」から「市民の総合計画」への転換を目指す。

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 「行政がやりたいことを市民が手伝うのではなく、市民が考えたことを行政が応援する時代だ」。全国のまちづくりに関わり、未来会議で進行役を務めた山口覚さん(津屋崎ブランチ代表)は参加者に強調した。

 未来会議は市役所への要望をまとめる場ではない。最終回のテーマは「私たちにできること」。山口さんは「人口が少なくなってもチームになれば豊かに暮らせる」と説き、複数の協力によって可能になることを考えてもらった。

 「行政の空き家バンクと建設業者が協力すれば、空き家の活用が進む」「松浦高校と病院、漁業者が組めば、松浦に残る生徒が増える」。グループで対話をしながらアイデアが湧く。真剣な表情の中に笑みがこぼれる。高校生も発言した。

 「1、2回だけのつもりだったけれど、話しやすい雰囲気で、4回とも参加した」。小川日菜子さん(佐世保西高2年)は大人とのやりとりを楽しんだ様子。教員志望の森田楓さん(松浦高2年)は「学校と地域が関わることの大切さが分かった」と振り返った。

 レンタル古民家を営む辻田直太郎さん(59)は「自分が住む地域だけでなく、松浦全体を考える機会になった」と満足そうだった。

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 山口さんは未来会議の意義をこう語る。

 「人口減少や人工知能の発達で、行政や専門家も将来が見通しにくく、明確な答えを持たない。ならば、地域のことを知る市民が話し合う方がいい」

 年齢も属性も多様な市民が交われば、行政が頼りにしてきた有識者やコンサルタントにはない意見、提案が生まれる可能性がある。何より、市民が地元の課題や将来像を「自分ごと」ととらえる機会になる。

 市は新年度に8地区で未来会議を重ね、総合計画案を審議会に諮る。友田吉泰市長は「未来会議に参加した人を審議会の委員にしたい」と明言した。

 山口さんはもう一歩踏み込んで「計画を作る過程だけでなく、実行段階にも市民が参加できれば、総合計画は市民のものになる」と期待する。

=2019/03/24付 西日本新聞朝刊=

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