「共謀罪」令状却下あるの? 裁判所のチェック機能、実効性懸念も

 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案を巡る論点の一つは、恣意(しい)的な捜査が行われるようになるか否かだ。これを否定する政府の根拠は「逮捕や捜索などの強制捜査を行うには裁判所の令状審査があり、捜査権限の乱用はあり得ない」というものだが、実際には捜査機関の令状請求はほとんど却下されていない。裁判所によるチェック機能が働いているとは言い切れない現状がある。

 「わが国においては裁判所による審査が機能しており、捜査機関による恣意的な運用ができない仕組みになっている」。金田勝年法相はこれまでの国会答弁で、警察などの捜査機関に対し、裁判所が「歯止め」となることを強調してきた。

 逮捕や家宅捜索などの強制処分は、裁判官が事前に発する令状に基づかなければならないのが原則。だが、最高裁によると、2015年度に全国で約10万2千件あった逮捕状請求のうち、却下は62件で、却下率は0・06%にとどまる。捜索差し押さえや検証許可などの令状も約24万9千件の申請に対し、却下は108件しかない。後に冤罪(えんざい)が確定した事件でも、裁判所は逮捕状を発付している。

 日本弁護士連合会の共謀罪法案対策本部事務局長の山下幸夫弁護士は「韓国などでは逮捕前に裁判所が容疑者本人の言い分を聞くが、日本の裁判官は捜査機関が提出した資料で判断する。捜査側の言い分だけで判断するので、よほどおかしな点がない限り却下されない」と指摘する。

 また、「共謀罪」の処罰対象となる組織的犯罪集団について、政府は「正当な団体でも、犯罪を目的とする集団に一変したと認定されれば適用対象になり得る」と説明。野党などは「『一変した』と判断するのは捜査機関で、継続的な監視が行われる」と主張している。

 山下弁護士は「通信傍受についても裁判所は捜査機関の令状請求をほとんど却下していない」として、裁判所のチェック機能を疑問視。「『組織的犯罪集団』や『準備行為』の定義もあいまいだ。将来、共謀罪が乱用されて市民が日常的に監視される恐れが強い」と懸念を示した。

=2017/04/25付 西日本新聞朝刊=

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