車いすテニス 進化する「足」 開発2000時間「世界に一つ」

会場には車いすを調整するブースが設けられている
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世界ランク1位のステファン・ウデ選手と愛用の車いす。車輪とハンドリムが一体型で背もたれがない。
世界ランク1位のステファン・ウデ選手と愛用の車いす。車輪とハンドリムが一体型で背もたれがない。
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開発中の真田卓選手の車いす。腰を安定させる部品が取り付けられている
開発中の真田卓選手の車いす。腰を安定させる部品が取り付けられている
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車いすに乗るサビーネ・エラーブロック選手。2本のベルトを調整し、体と密着させる
車いすに乗るサビーネ・エラーブロック選手。2本のベルトを調整し、体と密着させる
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 福岡県飯塚市で開かれている第33回飯塚国際車いすテニス大会。選手が使いこなす競技用車いすが高速サーブやリターンを生み出す“足”となり、試合の行方を左右する。「ハの字」形の主輪やシートは数ミリ単位で調整可能な仕様で、トップ選手の車いすの開発費は、高級車が購入できる金額に達することも。大会の魅力の一つでもあるそれぞれの「世界に1台」に迫った。

 多くの選手がアルミニウム素材の車いすを使うが、男子シングルス世界ランキング1位のステファン・ウデ選手(46)=フランス=はカーボン素材に乗る。

 頑丈で軽量。背もたれがなく、自走のための「ハンドリム」(車輪の縁)と主輪が一体になっているのが特徴で「開発には2千時間を要した」とウデ選手。金額は明かさないが、関係者の間では「高級車フェラーリが買える」と評判だ。

 事故で左足膝下を切断したウデ選手は腰の力が強く、片足での踏ん張りが利く。「膝立ちに近い状態でプレーできるデザイン。球を打ち返す力を伝えやすく安定性も格段に上がった」

 トップ選手の体重は国際ツアーなどの連戦もあり、数百グラム単位で増減する。片足切断の女子のサビーネ・エラーブロック選手(41)=ドイツ=は微妙な体の変化を2本のベルトで調整。常に車いすと密着するよう心掛けているという。価格は約180万円。

 2020年の東京パラリンピックを照準に改良を重ねるケースも。真田卓選手(31)は、ウデ選手のように腰の力を生かすことができる車いすをメーカーと開発中。2回戦で敗退したクアード(四肢まひ)の川野将太選手(31)は今後、車輪の直径を大きくする。「クアードのトップ選手はパワーテニス。ひとこぎの推進力を上げないと、相手の強打に対応できない」と実感したからだという。

 一般の車いすの車輪は左右の二つの主輪と前輪二つの計四輪。一方の競技用は主輪に加え、激しい動きに伴う転倒防止などのため前後に小さな補助輪が付く。

 トップ選手の車いす開発を手掛ける「オーエックスエンジニアリング」(千葉県)によると、一般的な車いすの価格は20万~25万円なのに対し、同社が販売している競技用は30万~40万円。九州支店の藤岡淳治支店長は「選手は戦術によって座席の高さやホイールの大きさ、主輪の傾斜角を変える。どの車両も世界に一つしかない高性能マシンです」。

 日本車いすテニス協会の橘信宏副会長は「競技用の開発が、一般の車いすの機能性向上にもつながれば」と期待する。

 飯塚大会は最終日の21日午前10時から、筑豊ハイツで男女シングルスの決勝戦がある。観戦無料。

=2017/05/20付 西日本新聞夕刊=

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