ぼうぜん 古里水浸し 九州北部豪雨 「これは現実なのか」 朝倉市松末小 避難住民 泥道歩き移動

流れ込んだ土砂で車が半分埋まった松末小の運動場。近くの山は数十メートルにわたり崩れていた=6日午前6時半ごろ、福岡県朝倉市杷木松末
流れ込んだ土砂で車が半分埋まった松末小の運動場。近くの山は数十メートルにわたり崩れていた=6日午前6時半ごろ、福岡県朝倉市杷木松末
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自衛隊のボートで救助される住民たち=6日午前8時16分、福岡県朝倉市福光
自衛隊のボートで救助される住民たち=6日午前8時16分、福岡県朝倉市福光
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 夜が明けて目に飛び込んできたのは、土砂にまみれ、変わり果てた古里の姿だった。5日から記録的豪雨に見舞われている福岡、大分の県境地域。あるはずの場所に家がない。道路は寸断され、鉄路も橋も流失した。刻一刻と増える安否不明者の情報。「無事でいて」。そんな住民たちの願いは届かず、男性1人の遺体が発見された。

 山が数十メートルにわたってえぐれ、氾濫した川が民家をのみ込んでいた。住民らが避難し、孤立していた福岡県朝倉市の松末(ますえ)小。豪雨から一夜が明けた6日、濁流によって一変した古里の姿にみな言葉を失った。

 「なんでこんなことに…」。住民の一人は校舎3階の窓から外を眺め、涙を浮かべた。杷木松末地区の自治組織「松末地域コミュニティ協議会」の職員は「近くの星丸地区を含め、10軒以上の家が流されたのではないか」と肩を落とした。

 昨夜から停電と断水が続き、残る水はペットボトル数本のみ。校舎に住民らと残った朝倉署の警察官に「自衛隊はいつ来ますか」と質問するが、答えはない。疲れて横になる高齢者の姿が目立ち、保育士は不安を和らげようと、子どもたちと歌を歌って励ました。

 午前5時半ごろ、警察官が「家族と連絡が取れない人は集まってください」と呼び掛けると、少なくとも十数人が連絡が取れていないことが分かった。東峰村で働く息子(35)と連絡が取れないという女性(61)は「昨日から携帯に電話しても出ない。仕事仲間と避難していると思うが不安だ。とにかく無事でいてほしい」と祈るように語った。

 「子どもやお年寄りを先に避難させてやりたいが、ここにいるしかない。食事も水もなくなってきた。どうにかならないか」と塚本成光校長。市議の一人は市役所の対策本部に電話し「ヘリを飛ばしてほしい」と懇願した。

 午前9時40分すぎ、雨がやみ始め、小学校周辺の水も引き始めた。「今しかない」。協議会の伊藤睦人会長らの判断で子どもを含む50人以上が校舎を出た。電柱が倒れ、道路は所々崩落している。ひっくり返った車もある。泥でぬかるんだ道を慎重に歩きながら、小学生の一人がつぶやいた。「これは現実なのか」

 途中、小学校へ救助に向かう自衛隊員とすれ違った。伊藤会長は「まだ小学校に何人も残っている。早く救助して」と声を掛けた。

 一行は1・6キロの道のりを40分以上かけて歩き、安全性が確保された杷木中に向かうマイクロバスが待つ場所へ。たどり着くと全員に安堵(あんど)の表情が浮かんだ。すでに周辺の住民が集まっており、次々にバスに乗り込んだ。

 60代の男性は「食事は子どもにあげたので、昨日から何も食べていない。早くおにぎりが食べたい」とひどく疲れた様子。伊藤会長はつぶやいた。「まだ終わっていない」

=2017/07/06付 西日本新聞夕刊=

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