九州豪雨氾濫、5年前と類似 流倒木が川せき止め

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大量の木々が家屋を取り囲むように流れ込んでいた赤谷川と乙石川の合流地点周辺=7日午後4時ごろ、福岡県朝倉市(本社ヘリから)
大量の木々が家屋を取り囲むように流れ込んでいた赤谷川と乙石川の合流地点周辺=7日午後4時ごろ、福岡県朝倉市(本社ヘリから)
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 5年前の教訓は生かされたのか-。福岡、大分両県を襲った記録的豪雨で氾濫した河川や浸水地域は、2012年の「九州北部豪雨」と重なる部分が多い。流倒木が川をせき止めるなど原因も類似。福岡県や国土交通省九州地方整備局は河川改修などを進めてきたが、結果的に甚大な被害を食い止めることはできなかった。住民たちは「また同じ所がやられた」と、古里の傷痕にやるせない思いを募らせている。

 5年前の7月、九州北部豪雨でも水があふれた福岡県朝倉市福光の桂川にかかる蓮輪橋付近。橋の近くに住む自営業、森田英樹さん(51)は7日、約1・3メートルまで床上浸水した家屋の片付けに追われ、不満の声を漏らした。「川幅の拡幅だけではなく、川に隣接する住宅地や田んぼにたまった内水を筑後川に排水するポンプも設置してほしいと、行政にずっと要望しているのだが…」。いらだちを隠さない。

 赤谷川が流れる同市杷木地区の男性(46)も6日、「5年前もこの地域は被害が出た」とぶぜん。「対策をしない行政に対して憤りの気持ちはある」-。

 今回、河川の氾濫の多くは、筑後川の本流ではなく支流で発生。局地的な集中豪雨で山の斜面が崩れ、土砂とともに流れた樹木が家屋をなぎ倒し、川の流れをせき止めて氾濫させた。九州北部豪雨で被災地の土木学会調査団長を務めた小松利光・九州大名誉教授(河川工学)は「被害の発生状況や原因は当時と全く同じ」と指摘。「流木があると、水流だけの場合より格段に破壊力がある」という。

 村の86%を山林が占める東峰村でも、なぎ倒されたスギが集落などに押し寄せた。針葉樹のスギは根の張り方が広葉樹より浅く保水力が低いとされ、大雨が降るとスギは山の表層ごと崩落する。「国策に従いスギの植林を進めたが…。林業の衰退とともに手入れが行き届かなくなったのも原因では」。渋谷博昭村長は疲れた表情で語った。

 近年、「線状降水帯」と呼ばれる積乱雲の帯に伴う大雨は全国各地で記録。福岡管区気象台によると九州・山口では、1時間50ミリ以上80ミリ未満の「非常に激しい雨」の降る回数が2000年代は1980年代と比べて4割増えた。小松名誉教授は「局地的な集中豪雨は被害発生の予測も対策も難しい。早め早めに住民が避難するなど、ソフト面でカバーするしかない」と話す。

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■河川改修追い付かず

 「災害は一個一個同じじゃない。状況に合わせてしっかり対応していく」

 7日朝、福岡空港。海外出張から急きょ帰国した福岡県の小川洋知事は「5年前の経験は生かされたか」との報道陣の問いに対し、こう述べるにとどめた。

 2012年7月の九州北部豪雨は福岡、熊本、大分の3県で計31人が亡くなった。福岡県朝倉市を流れる赤谷川や桂川は今回の豪雨でも氾濫。ともに九州最大の筑後川の支流だ。筑後川は1953年に流域全体で死者147人を出した「筑後川大水害」など、本・支流でたびたび氾濫を起こしてきた「暴れ川」として知られる。

 両支流を管理する県は12~14年度、赤谷川の復旧工事を実施。削れた護岸を直し、川底の土砂も取り除いたものの、川幅拡張などの増強工事は見送った。桂川は拡幅や川底掘削などを行っているが、工事進捗(しんちょく)率は5割未満で完成予定は9年先だ。ただ県の担当者は「今回は5年前より被害が大きい。赤谷川の流域、桂川の上流に、想像のつかない雨が集中的に降ったようだ」と「想定外」を強調。「多くの支流を九州北部豪雨以上の想定で増強するには、工期も費用もかかり過ぎる」と説明する。

 九州地方整備局によると同じ筑後川水系で大分県日田市を流れる花月川でも今回、九州北部豪雨と同じ場所で越水や護岸・堤防の損壊が計4カ所あった。同県中津市の山国川でも3カ所で越水や損壊が重なった。

 同局も12年度以降、筑後川水系など管内7水系76カ所で堤防新設や川底掘削などに当たる。花月川でも来年3月の完工を目指し堤防かさ上げなどの工事を進めていたが「想定はあくまで前回の豪雨並みの水位。花月川はそれを上回った」(河川計画課)としている。

=2017/07/08付 西日本新聞朝刊=

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