誓う鎮魂の和牛日本一 口蹄疫で殺処分、宮崎代表河野さん 「畜産再生の姿 全国に」

口蹄疫の被害が集中した宮崎県児湯郡から県代表となり、若雌「こはる」と全共での活躍を誓う河野久徳さん
口蹄疫の被害が集中した宮崎県児湯郡から県代表となり、若雌「こはる」と全共での活躍を誓う河野久徳さん
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 宮崎県で2010年に発生し、牛や豚など約30万頭が殺処分された家畜伝染病・口蹄疫(こうていえき)で、牛42頭を失った同県都農町川北の繁殖農家河野久徳さん(64)が、仙台市で9月7~11日に開かれる日本最大の和牛品評会「第11回全国和牛能力共進会」(全共)に宮崎県代表の一員として出場する。5年に1度開かれ「和牛のオリンピック」とも呼ばれる全共に、被害が集中した県中部の児湯(こゆ)郡から出場するのは河野さんだけ。「犠牲となった牛たちのためにも日本一に」。口蹄疫から立ち直った畜産王国の姿を全国に発信したいと思っている。

 自分もお前達の所に行こうと何度も何度も想いはしたが出来なかった。許してほしい。その分四十二頭の力を借りてもう一度再開する。天空の牧場から見守ってほしい。今日から前をむいて行く事にする。あきらめずに畜産再生の為に

 10年秋の畜産再開前。河野さんは、牛舎の柱にこう記していた。庭には小さなほこらを作り、母牛と子牛の石像を一緒に安置している。

 妻の順子さん(63)とともに、雌牛を飼育し生まれた子牛を家畜市場で売る「繁殖農家」を長年営んできた。07年には児湯地区の品評会でグランドチャンピオン(優等首席)にも輝いた。

 都農町で口蹄疫が発生したのは10年4月。河野さんの牛は感染しなかったが、近くの農場では感染牛が出た。同年5月下旬、殺処分を前提としたワクチン接種を受け入れた。

 殺処分の日は雨が降っていた。12年間手塩にかけた母牛、生後1週間の子牛、妊娠中の牛もいた。お産から日々の世話まで、昼夜なく見守ってきた牛たち。「牛は家族同然。今も忘れられません」

 ゼロからの再スタート。雌牛の調達から始まり、7年かけて母牛16頭、子牛11頭にまで増えた。隣町で購入した雌牛「ひかる」が16年2月に産んだ「こはる」と今年7月、全共の県内選考に初挑戦した。毛並みも立ち姿も群を抜いて美しく、将来の繁殖雌牛の可能性を競う若雌の区分で代表に選ばれた。

 ブランド黒毛和牛「宮崎牛」で知られる宮崎県は、全共の各部門の総合得点で道府県の順位を決める団体賞で2連覇中。今回は28頭(23個人・団体)が出場する。「頂点に立って、宮崎の3連覇に貢献したい」。天空の牛たちに誓う。

=2017/08/22付 西日本新聞朝刊=

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