芸人の“授業”ウケなきゃ損!? 無名の若手、児童にキャリア教育 北九州市出身のタイキ現象さん 漫才通じ「夢への努力」

児童たちに漫才を披露する「元旦ゲリラゴリラ」のタイキ現象さん(左端)ら=11月15日、千葉県浦安市のホテル
児童たちに漫才を披露する「元旦ゲリラゴリラ」のタイキ現象さん(左端)ら=11月15日、千葉県浦安市のホテル
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タイキ現象さんが呼んだ先輩芸人のショーを見学する大井川東小の児童たち=11月15日、千葉県浦安市
タイキ現象さんが呼んだ先輩芸人のショーを見学する大井川東小の児童たち=11月15日、千葉県浦安市
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(左)増田浩二さん(右)タイキ現象さん
(左)増田浩二さん(右)タイキ現象さん
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 まだ無名の若手芸人が、小学生の職業観を養うキャリア教育の講師に起用された。北九州市出身で、九州工業大(同市)を卒業後にお笑いの世界に飛び込んだ「タイキ現象」こと水江太紀さん(27)。相方や先輩5人とともに、ボランティアで臨んだ「お笑いライブ」方式の講話は笑いの渦に包まれた。それにしても、なぜ芸人を講師に? そこには、ある教諭の思いがあった。

⇒お笑い芸人の道を選んだきっかけは?漫才コンビ「元旦ゲリラゴリラ」に聞く

■動画

 講話を企画したのは、静岡県焼津市立大井川東小で6年生の学年主任を務める増田浩二さん(60)。来春の定年退職を前に「子どもたちに最後の贈り物をしたい」と考えていた。舞台は11月の修学旅行。「夢のかなえ方を知ろう」をテーマに2泊3日で首都圏を回り、国会議事堂やもんじゃ焼きの老舗、東京ディズニーランドなどを訪れることになっていた。しかし、もっと心に残ることはないか。「せっかく東京に行くのだから、東京でしか会えない人に会わせたい」

 自らギターを抱えて焼津市内の路上や東京のライブハウスなどで歌っている増田さんは、音楽や芸事で身を立てようとする若者たちの真剣さを肌身で感じていた。水江さんと知り合ったのもライブハウス。「夢をかなえるには自分を磨くこと。まだ無名の若手芸人だからこそ、努力がいかに大切かを語れるはず」。増田さんはそう言って、水江さんを口説いたという。

 水江さんは福岡県立小倉高から九工大を卒業後、2014年に上京。1人でネタを披露する「ピン芸人」として活動を始め、昨年5月には漫才コンビ「元旦ゲリラゴリラ」を結成した。ビル清掃のアルバイトで生活費を賄いながら、芸人としての腕を磨いている。

 増田さんの話を聞いて「自分で大丈夫か」とも思ったが、「今の自分の姿を子どもたちにライブで見てもらえば、何か感じてくれるかもしれない」と承諾。相方や先輩たちにも「ボランティアで」と頼み込み、その日を迎えた。

   ◇    ◇

 11月15日、千葉県浦安市のホテル。6年生60人が待つ会場に水江さんたちが現れた。「元旦ゲリラゴリラ」の出し物は、いろんな生物との「戦い方」を紹介するアクション漫才。最初の相手はライオン、次はペンギン、シロアリ、ハエ…。だが、戦い方は全部同じという落ちで大受けだった。

 児童たちからは「芸人の道を選んだ理由」「良かったところ、つらいところ」など質問が続出。「(ライブでの)人との出会いはうれしいが、せっかく出会ってもすべるとつらい」。芸人たちは笑いを誘いつつ、日常を赤裸々に語った。そして、アルバイトをしなければ生活できない状況にありながら「ずっとネタを考えている」「発声練習は欠かさない」などと、夢に向けて努力を重ねていることを打ち明けた。

 講話は2時間。ある男児(12)は「芸人さんって楽しいことばかりだと思っていたけど、見えない所でいろんな努力や苦労をしていることが分かった」。

 増田さんには水江さんと同い年の息子がいる。「彼が東京で頑張っている姿を九州のご両親にも見せたい」と言うと、水江さんは「いい勉強になりました。もっと面白いと言わせたい」とさらなる努力を誓った。

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=2017/12/07付 西日本新聞夕刊=

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