梅毒急増で根拠薄い投稿拡散 葛飾区議がツイート 「差別あおる」指摘も

鈴木信行葛飾区議が11月28日に発信したツイッターの画面
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 国内で急増する梅毒感染について、訪日中国人観光客の増加が原因だと地方議員がツイッターで指摘し、インターネット上で拡散している。議員はネット情報などを根拠に挙げ、賛同するブログもあるが、専門機関によれば、因果関係を裏付けるデータはない。根拠に乏しい言説がなぜ広がるのか。

 〈誰が日本に持ち込んだか分かるじゃん。一番日本に来ている外国人の支那人だよ。〉

 国立感染症研究所が、今年の梅毒感染者が5053人に達したと発表した11月28日。東京都葛飾区議の鈴木信行氏はツイッターでこう発信した。感染者が5千人を超えるのは1973年以来、44年ぶりだった。

 鈴木氏はブログでも、訪日中国人が10年間で急増したことを示す統計を紹介し、感染報告数の伸びと一致すると指摘。訪日外国人旅行者の増加が梅毒急増の「外的要因」と類推する医師のブログの一部を引用するなどして持論を展開した。

 外国人差別につながりかねない内容だが、そもそも真偽はどうなのか。

 厚生労働省によると、医師が梅毒患者を診察した場合、感染経路や感染地域を届け出る必要がある。ところが、国籍に関する情報は届け出項目になく、担当者は「中国人観光客との因果関係は調査しないと分からない」と話す。

 国立感染症研究所も「国外から梅毒の細菌が流入するリスクはあるが、中国からとは断じられない」と否定的。鈴木氏が引用したブログに関し、執筆者の医師が勤務する病院のスタッフは「可能性のある要因の一つとして挙げただけ」と困惑する。医師が診察で梅毒感染を見逃さなくなったり、検査を受ける人が増えたりしたとの見方もあり、感染急増の原因はよく分かっていないのが実情だ。

 訪日中国人数と梅毒感染数の推移を示すデータを比べても、疑問が残る。確かに近年、増加傾向の一致が目立つが、中国人数が増えた2008~10年は、梅毒報告数は逆に減っている。

 どんな意図で発信したのか。鈴木氏は西日本新聞の取材に「中国は公称数十万人の梅毒患者がおり、感染ルートとして十分ありうる。性風俗産業で働く日本人女性を守るため、警告するのは議員として当然だ」と話した。根拠を問うと、訪日中国人数の統計とブログ情報、風俗産業を調査する知人の話を参考に「総合的に間違いないと判断した」と説明。実際に中国人との性交渉で感染したケースは確認していないという。

 ヘイトスピーチに詳しいジャーナリストの安田浩一さん(53)は「議員にもかかわらず、自分で裏付けを取ることなく、ネットの断片的な情報に振り回されている。典型的なネット右翼と同じく、外国人に対する差別と偏見をあおるのが狙いだ」と批判する。

 ソーシャルメディアの普及で誰もが気軽に情報発信できる一方、デマ投稿も拡散しやすく、差別をあおりかねない。ツイッター社に差別表現の削除を求める市民グループ「トウキョウ ノー ヘイト」の石野雅之さん(57)は「差別表現を野放しにすれば、それを許容する空気が社会に出てくる。運営企業がきちんと対応するべきだ」と指摘した。

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■受け手、内容検証を

 「ウェブ社会のゆくえ」の著書がある関西学院大の鈴木謙介准教授(理論社会学)の話 最近はトランプ米大統領のように、政治家がフェイクニュースを意図的に流し、支持を集めようとするケースがみられる。ソーシャルメディアでは、たとえ極端な主張であっても拡散しやすく、真に受ける人も出てくる。情報の受け手は拡散に加担せず、内容を冷静に検証してほしい。

=2017/12/08付 西日本新聞朝刊=

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