九州7県の肉牛農家「赤字」 子牛価格高騰、肉は下落傾向 市場開放で追い打ちも

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 日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)交渉が8日に妥結するなど農業の市場開放が進む中、関税削減の影響が懸念される九州の和牛肥育農家の収支が悪化している。九州7県では10月出荷分までに、牛の生産費が収入を上回り、経営安定対策が発動された。九州では2年ぶりで、識者からは「早急に支援策を」との声も上がる。

 経営安定対策は、独立行政法人「農畜産業振興機構」が運営する「肉用牛肥育経営安定特別対策事業(牛マルキン)」。子牛価格や飼料代といった生産費の1頭当たりの平均が収入を上回ると、赤字額の8割を補填(ほてん)する。任意加入で、肥育農家と国が1対3の割合で積み立てた基金が財源。九州では県別に運用される。

 子牛を購入して育て、肉牛として出荷する肥育農家の収支悪化の要因は、子牛価格の高騰だ。子牛を出荷する繁殖農家の離農が高齢化で加速したほか、2010年に発生した宮崎県の口蹄疫(こうていえき)などで子牛不足が深刻化した。今年10月に出荷された全国平均の子牛仕入れ価格は、生産費の6割超の約73万7500円。前年同月と比べ、14万6千円ほど高くなっている。

 近年、最高水準で推移していた枝肉価格は、今年初めごろから下降傾向に。10月分は1キロ当たり2362円で前年同月より173円安くなった。ブランド牛は高値を保つ一方、量販店が価格の上がった和牛を避け、ホルスタインとの交雑種など割安な国産牛に切り替えたことから、一般消費者向けの和牛価格が下落したとみられる。

 九州は、大消費地との距離やブランド力不足で価格が全国を下回ることも多い。10月分の枝肉価格は、全国平均より1キロ当たり最大124円安かった。

 こうした傾向を受け、まず大分、熊本両県で7月出荷分の収支が赤字に陥った。赤字は10月分までに全県に拡大。長崎県では同月分の1頭当たりの補填額が、飼料代が未確定のため赤字の8割から4千円を差し引いた概算払いの段階で、8万5200円に達した。福岡県朝倉市で約250頭を肥育する堀内幸浩さん(44)は「この環境が続けば、生産規模の維持が難しくなる」と訴える。

 厳しい状況下、市場開放に向けた動きは進む。19年にも発効見込みの日欧EPAで、農林水産省は牛肉について「長期的には価格下落が懸念される」との影響予想を公表した。発効後に補填率を9割に引き上げることを決めていたが、収支悪化を受け、18年度も補填率を9割にする。

 ただ、子牛価格は平均85万円程度まで上昇しており、今後さらに厳しくなることも予想される。東京大大学院の鈴木宣弘教授(農業経済学)は「経営環境は明らかに悪化している。日欧EPAなどの対策より先に、まずは緊急的な支援策が必要だ」と話している。

=2017/12/17付 西日本新聞朝刊=

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