めんたいこ魔法の鮮度 「古いタラコを商品化」怪情報 冷凍長持ち管理徹底 【あなたの特命取材班】

冷凍保管されているタラコ。辛子めんたいこの原材料になる
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包装や表示が公正と認められた辛子めんたいこに表示する業界独自の「公正マーク」
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 1月10日は「明太子(めんたいこ)の日」。福岡のメーカーが1949年に初めて辛子めんたいこを販売した日という。鮮度が大切な生ものというイメージが強いが、「倒産した水産業者から古くなった原材料のタラコを仕入れ、魔法のように商品化している業者がいる」との投書が寄せられた。まさか、そんなことが可能なのか。特命取材班は、福岡を代表する特産品の秘密に迫った。

 「あんな怪文書を信じるんですか」。福岡市の製造業者を訪ねたところ、従業員はいきなり憤った。本紙に届いたのと同じ内容の文書が届いたという。

 同社の社長によると、4年前に倒産した業者の古いタラコを仕入れて商品化し、一昨年から昨年にかけて販売したのは事実。ただし、厳密な細菌検査を経ており、品質や安全性に問題はないという。「腐ったタラコを売れば信用問題になる。考えられないですよ」と社長。

 実は、同じ内容の情報提供を受けて保健所が昨年11~12月、同社に抜き打ち検査を2回実施。伝票の確認や細菌検査結果の分析、従業員からの聞き取りをした結果、「不正はない」と確認したという。

 ここで素朴な疑問が浮かぶ。古いタラコを原材料にしても大丈夫なのか。

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 「タラコは肉などと違って油分がほとんどない。マイナス30度近い倉庫で冷凍保管すれば、10年ほどは品質劣化しないのです」。水産加工品メーカーの全国組織「全国水産加工業協同組合連合会」(東京)の佐々木康弘参事(62)は言う。

 タラコは北海道近海や米国、ロシアの北洋で取れるスケトウダラの卵。年ごとの好不漁によって仕入れ価格が変動するほか、東西冷戦時代に旧ソ連からの輸入量が抑えられていた事情もあり、「昔から数年単位で冷凍保管し、在庫調整を図ることがあった」という。

 2007年に発覚した大阪市の高級料亭による食品表示偽装問題では、めんたいこの賞味期限のラベルを貼り替えていたことが判明。福岡市の業者でも同じような問題が明るみに出た。あってはならない不正だが、当時を知る保健所の職員は「しっかり冷凍保管していれば、中身は問題なかった可能性がある」と話す。

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 もっとも、近年は長期冷凍保管するケースは珍しいとか。めんたいこは今、おにぎりの具やパスタ、卵焼きなど用途が多様化し、パウダーを使ったスナック菓子も登場。全国区の食品となっており、在庫を抱えること自体、減っているためだ。

 東京都中央卸売市場によると、国際的な価格高騰を受け、塩鮭(しおざけ)など塩蔵品の取扱量が過去10年で4割近く減少する中、めんたいこは一貫して200万キログラム台を維持している。もはや「博多の特産品」との印象さえ薄れつつある。

 「最近は、仕入れたタラコは基本的にその年にさばきます」。「全国辛子めんたいこ食品公正取引協議会」の田中洋之会長(48)は言う。ソ連崩壊後、ロシアからの輸入量も安定的に確保できているという。

 かつての不祥事を教訓に、業界は包装や表示のルールを定め、10年からは独自の「表示・衛生管理士」の認定試験を始めるなど試行錯誤を続けている。「原点に戻り、博多辛子めんたいこのブランドを大切にしたい」。田中会長はからしのようにぴりりと表情を引き締めた。

=2018/01/11付 西日本新聞朝刊=

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