「工藤会から報酬ない」 福岡地裁 野村被告脱税否定 工藤会裁判

 特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)の上納金を巡る脱税事件で、所得税法違反の罪に問われた同会総裁、野村悟被告(71)らの公判が12日、福岡地裁(足立勉裁判長)であった。被告人質問で野村被告は「工藤会と個人の金は全く別で報酬はない。自分の所得は把握し、適正に税務申告していた」と述べ、工藤会への上納金の一部を個人所得とし、脱税したとする検察側の主張を否定した。検察側が3月27日に求刑し、同29日に弁護側が最終弁論して結審する。

 弁護側の質問で野村被告は個人資産について、1980~2000年ごろに違法な賭場を開帳し「金融、不動産、JR日豊線沿いの市議や町議」を客として「最高で1日2億円、平均で2千万~3千万円を稼いだ。20年間の稼ぎは10億円余りだった」と説明。他にも「親から相続した7億円」があったと述べた。

 税務申告している収入は経営する駐車場の売り上げと不動産の売却益で、工藤会から報酬は受け取っていないとし、建設業者などからのみかじめ料についても「知らない」と繰り返した。みかじめ料のうち3割を取り分として自らが仕分けしていたとする元組関係者の証言には「受け取っていないし、絶対にあり得ない」と反論した。

 漁協組合長殺害容疑で逮捕された14年9月以降、工藤会の金が野村被告の私的用途に充てられた点は「逮捕されて銀行から金が引き出せなくなったため立て替えてもらったが返済している」と流用を否定した。

 起訴状によると、野村被告は山中政吉被告(67)と共謀。10~14年、上納金から得た8億990万円を野村被告の個人所得として申告せず、約3億2067万円を脱税したとされる。

■相続、賭博開帳…口座に14億円 検察 資金力の実態指摘

 12日に福岡地裁であった特定危険指定暴力団工藤会総裁の野村悟被告(71)の被告人質問。検察側は、福岡県警の工藤会壊滅作戦で逮捕された2014年末時点で、野村被告名義の口座の残高が約14億円だったことを明らかにした。他にも数千万円の絵画や3千万円超の高級外車を複数保有するなど「莫大(ばくだい)な資金と恐怖政治で組織の頂点に上り詰めた」(捜査関係者)とする工藤会トップの実態を浮かび上がらせた。

 紺色のスーツに白のワイシャツ姿、左耳に補聴器を着けて法廷に立った。自らの生い立ちについて、農家の6人きょうだいの末っ子で、父は北九州市小倉北区や小倉南区に田や山を多数所有。団地や企業の社宅用地として売った土地の利益は7億円に上り、財産を管理していた母が死亡した1988年に相続したことを淡々と語った。

 1980年ごろからは小倉北区の繁華街の元すし店や自宅で賭場を開帳し「タブサイ」と呼ばれるさいころ賭博で巨額を稼ぎ出した。その金は銀行口座や自宅の金庫で管理したという。

 豊富な資金力を背景に、トップに就いたとみられる野村被告は工藤会の運営について「(前職の)会長時代から一切関与していない」と繰り返し、総裁の今は「隠居として隅っこにおらせてもろうとる感じです」。

 感情を表に出すことなく質問に答え続けたが、唯一、語気を強めたのは、検察側から「愛人」とされる女性用にマンションを購入したことを尋ねられた時だ。「愛人関係と言うのはやめてください。知人です」「ばかな質問ですね」

=2018/01/13付 西日本新聞朝刊=

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