ヘリもう飛ばないで 神埼墜落事故 空を見上げ住民「怖い」

写真を見る
写真を見る
4枚の羽根をつなぐ「メインローターヘッド」(AH64D攻撃ヘリコプターの模型)
4枚の羽根をつなぐ「メインローターヘッド」(AH64D攻撃ヘリコプターの模型)
写真を見る

 佐賀県神埼市の住宅地を恐怖のどん底に陥れた陸上自衛隊ヘリコプターの墜落事故から一夜明けた6日、付近住民には不安が広がった。「ヘリの飛行は前から心配だった」「もう上空を飛んでほしくない」の声も。焼け落ちた住宅が残る現場では、自衛隊や警察による現場検証が続けられ、防衛省幹部らの視察も相次いだ。

 「沖縄でも米軍ヘリの事故が相次いでいたので、ヘリが飛ぶ姿を見て前々から心配だった」。近くの認定こども園の平尾法道園長は、不安が的中した現実に険しい表情を浮かべた。

 この日、園内では自衛隊と警察がヘリの落下物がないかを確認。現場派遣された大野敬太郎防衛政務官が訪れ「大変なご迷惑をおかけした。二度とこうしたことが起きないよう改善する」と陳謝した。

 子どもたちにも動揺が広がっている。現場から約300メートル離れた市立千代田中部小では複数の保護者が児童と学校に向かっていた。30代の主婦は「娘が『怖い』と話しているので、心配で途中まで見送りに来た。自分の家に墜落していたら…」と不安な様子。学校側も事故の影響を危ぶみ、田中達校長は「児童の心のケアのためにスクールカウンセラーの派遣要請を検討している」と説明した。

 一方、現場では午前7時半すぎ、陸上自衛隊と佐賀県警の警察官ら数十人による現場検証が始まった。午前8時すぎ、行方不明となっていた斉藤謙一2等陸佐(43)の遺体の一部を発見した。墜落現場となった民家からヘリの残骸とみられる部品を運び出す姿も見られた。

 近くで検証の様子をうかがっていた女性(87)は「住宅の上はもう飛ばないでほしい」と漏らした。

■主翼離陸後異常か 飛行直前の点検問題なし

 佐賀県神埼市の住宅に墜落した陸上自衛隊のAH64D攻撃ヘリコプターは飛行前、メインローター(主回転翼)ヘッドを交換したばかりだった。4枚の羽根(回転翼)をつなぐ重要な部品だ。陸自は定期的に点検や部品交換を実施し、離陸直前の点検でも異常はなかったとするが、専門家は「異常を疑わざるを得ない」とみる。

 防衛省関係者の説明によると、メインローターヘッドは、機体上部の主回転軸の中心部にあり、エンジンの動力を回転翼に伝える役割を果たす。

 通常、25時間や50時間の飛行ごとに定期点検を行い、6カ月ごとの特別点検も実施。事故機は2006年3月配備で、整備規定で1750時間の飛行をめどとされるメインローターヘッドを初めて交換した直後に事故が起きた。

 陸自によると、事故機は50飛行時間ごとの定期整備後の点検飛行で、目達原(めたばる)駐屯地を離陸して2分後に管制官と交信。この際、異常を示すようなやりとりはなかったという。

 同省関係者は「定期点検や離陸前点検では異常がなかったのではないか」とするが、航空評論家の青木謙知氏は「ある程度はきちんと整備していたが不完全だったため、離陸後しばらくして初めて、機体に異常が生じたのではないか」とみる。

 目撃証言によると、主回転翼は機体から分離して落下。墜落現場から数百メートル離れた場所でも機体の部品が確認されており、青木氏は「墜落の衝撃で数百メートルも部品が飛散するとは考えにくく、空中分解したと考えるのが自然」と話す。

 事故機は飛行中にエンジンが停止しても、主回転翼が回転し続けて安全に着陸する「オートローテーション機能」を備えていたが、「機体は制御できる状態ではなく、同機能も役立たなかったのでは」と推測した。

 神埼市では事故時、大雪、雷、低温などの注意報が出ていた。現場の約7キロ西にある佐賀地方気象台では同日午後2時23分、最大瞬間風速14・5メートルを記録。上空ではより強い風が吹いていた可能性がある。青木氏は「詳しい気象状況が分からないので、影響があったかどうか、何とも言えない」と話した。

=2018/02/07付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

ボートレース3連単直前予想

西日本新聞のイチオシ [PR]