指定難病「HAM」進行阻止に成果 研究グループ「根治新薬へ可能性」

 九州に感染者が多い厚生労働省の指定難病「HTLV1関連脊髄症(HAM)」の患者に、白血病治療薬として開発された薬を投与して症状の進行を阻止する治療法の研究成果を聖マリアンナ医科大(川崎市)の山野嘉久教授の研究グループがまとめた。7日付の米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に論文を発表した。

 山野教授によると、今回使用した薬は、HAMと同じくウイルスHTLV1が原因の難治性血液がん・成人T細胞白血病(ATL)の治療薬として、国内の製薬企業が開発した「抗CCR4抗体KW-0761」。ATL治療に使う分量の千分の3から10分の3まで5段階に薄め、男女21人のHAM患者に約1年間、2~3カ月ごとに投与した。

 その結果、患者の病原性細胞が著しく減少し、脊髄の炎症を増幅させる「CXCL10」というタンパク質が減ることも確認できた。副作用については軽度の皮膚の発疹が出た程度で、重篤な症状は出なかったという。21人の一部にはATLを発症するリスクの高い患者がいたが、投与でATL前駆細胞が減少。薬がATLへの進行も防ぐ可能性があることも発見した。

 薬は現在、製薬会社主導で最終段階の臨床試験が行われており、数年内の実用化を目指している。山野教授は「今回の研究成果で、血液中のHTLV1感染細胞を大きく減少させることを証明し、根本的な治療薬開発につながる可能性がある」としている。

【ワードBOX】HTLV1関連脊髄症(HAM)

 HTLV1というウイルスが、血液中のリンパ球に感染して脊髄に慢性の炎症を起こす神経難病。つえや車いすが必要になる下半身まひと排尿・排便障害が主症状で、進行すると寝たきりになる。HTLV1は主に母乳を介して母子感染し、国内感染者は推計100万人を超すといわれる。2010年の全国疫学調査によると、HAMを発症した国内患者数は推計約3千人。九州や四国に多いが、東京や大阪、名古屋などの大都市圏でも増加し、全国へ拡散傾向にある。

=2018/02/09付 西日本新聞朝刊=

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