精神障害の社員と書籍刊行続け10周年 「ラグーナ出版」の川畑善博社長

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 社員の大半に精神障害がある出版社「ラグーナ出版」(鹿児島市)が今月、設立10年を迎えた。毎週、編集会議で社員と協議し、精神障害者の体験談や文芸作品などの書籍を刊行。「本を通じて精神障害に悩む人の励ましになれば」と話す。

 鹿児島県出水市出身。東京の大学を卒業して出版社で働き、鹿児島に帰郷後は精神科病院で精神保健福祉士などを務めた。入院患者が記した幻聴体験を他の患者に見せると、同じ苦しみに共感したり、勇気づけられたりしていることに気付いた。

 こうした体験から患者らと創刊したのが雑誌「シナプスの笑い」だ。二つの前職を生かす形で2008年に会社化。現在、社員41人中30人に障害があるが、その社員が取材したメンタルヘルス特集や連載小説などを年3回刊行。2月には第34号を出版する。

 知名度が上がり、全国の患者から投稿が寄せられるが、ページ数の都合などで「全部を掲載できずいつも苦悩する」と明かす。

 一方、昔は「患者の内面をありのまま知ってもらおう」と多少の支離滅裂な表現でもそのまま載せて迫力があったが、最近は精神障害への誤解を生まないか気にするあまり、文章がスマートになり過ぎたとも感じる。「この10年で得るものも、失うものもあった。原点に戻るかが課題」

 同社は書籍のレイアウトや製本も手掛けており、外部から注文も受ける。「今はほとんど社員任せ。社長のやることがなくなっている。そういう雑誌にできて夢がかなった」。鹿児島市で妻と2人暮らし。49歳。

=2018/02/12付 西日本新聞朝刊=

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