原発「安全神話」におわす冊子に波紋 玄海が事故でも汚染は福島の「2000分の1」 九電が住民に配布、佐賀知事ら苦言

九州電力が戸別配布したリーフレット。放射性物質の放出量は福島事故時の「約2000分の1」と明記した
九州電力が戸別配布したリーフレット。放射性物質の放出量は福島事故時の「約2000分の1」と明記した
写真を見る

 九州電力が3月下旬に予定する玄海原発3号機(佐賀県玄海町)の再稼働に先立ち、地元住民らに配布したリーフレットに「万が一の事故の際も、放射性物質の放出量は、福島事故時の約2000分の1と確認された」などの記述があることに対し疑問の声が上がっている。5日、県議会の一般質問で見解を問われた佐賀県の山口祥義知事は「安全神話につながる」と苦言を呈した。原子力規制委員会の更田(ふけた)豊志委員長も「ゼロリスクと同じ。到底申し上げていいことではない」と指摘している。

 リーフレットはA3判二つ折りのカラー計4ページ。「玄海原子力発電所の安全性がさらに向上した」との表題で、事故の際の放射性物質の放出量について「『4・5テラベクレル(1基あたり)』になることが、原子力規制委員会で確認された」と太字で表記。数値の前提として「新たに設置した設備や対策により、(原子炉)格納容器は破損しない」などとしている。

 更田委員長は2月11日、同県唐津市であった関係自治体と九電関係者を交えた意見交換会で「これ以上の規模の事故はない、というのはゼロリスクと同じ。私たちが到底申し上げていいことではない」と指摘。山口知事は5日、県議会で「安全神話につながる。決して福島事故以前のような姿勢に戻ることがないよう(九電に)しっかりと認識を持ってもらう」、県の担当部長も「(安全神話の)疑念を抱かせるようなものにならないよう申し入れたい」と述べた。

 九電は「安全神話との疑念を招くことは本意ではない。地域の皆さまに安全対策などにご理解いただき、安心していただくことが何より重要と考え、引き続き丁寧なコミュニケーションに努める」としている。

 九電によると、リーフレットは昨年1月、規制委の原子炉設置変更許可を受け作成。同2月以降、玄海町と唐津市の一部(鎮西、肥前、呼子3町)の約7500戸と3県の区長約3千人を対象に戸別配布している。

■「フクシマの教訓無視」識者 「都合のいい情報強調」住民

 「想定外」で最大16万人以上が古里を追われた東京電力福島第1原発事故の教訓は生かされているか。

 九州電力のリーフレットは、玄海原発(佐賀県玄海町)で重大事故が起きても「安全対策により、水素爆発は起きないため建物は壊れない」「(原子炉)格納容器は破損せず」と明記。安全性の向上を強調する一方、どんな事故を前提にした試算か、格納容器が破損しないと断言できる根拠など具体的な記述はない。

 原子力規制庁によると、福島事故を受けた新規制基準は、「100万年に1度」(技術基盤課)の事故が起きても、放射性物質セシウム137の放出量が1基当たり100テラベクレル(福島事故の約100分の1)を超えない-と規定している。

 新基準は「原子炉からの配管が真っ二つになるような重大事故で、電源も冷却材も喪失して水の注入もできなくなり、炉心が溶融する事態」を想定。ただ、実用炉審査部門の担当者は「ミサイル攻撃など、ありとあらゆる事態を想定したものではない」と明かした。

 広瀬弘忠・東京女子大名誉教授(災害リスク学)は「福島より大きな事故が起こる可能性もある。福島の2千分の1という放出量でも、風向きなどによっては大きな被害が出かねない」と懸念を示す。

 有識者団体「原子力市民委員会」座長代理の大島堅一・龍谷大教授(環境経済学)は「想定外のことが起こるという福島の教訓を忘れて、格納容器は壊れないと言い切っており、原発を住民に受け入れさせることが目的のリーフレット。重要なのは、事故が起こった時のリスクを理解してもらった上で納得してもらうことだ」と訴える。

 地元の玄海町でも、原発賛成派と反対派の双方に批判の声がある。

 原発建設に携わった元ゼネコン社員の八島一郎さん(69)は「福島事故の2千分の1の規模と言われても、何のことか分からない。絶対の安全はないと住民にも浸透してきたところだったのに」と首をかしげる。

 原発誘致段階から反対を続ける元中学校教員の仲秋喜道さん(88)は「専門用語を使って再稼働に有利な情報ばかり並べた冊子で、九電は住民説明をした。きちんとした資料で説明をやり直すべきだ」と話した。

=2018/03/06付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]