大崎事件、高裁も「再審」 宮崎支部「事故死の可能性」

 鹿児島県大崎町で1979年に男性=当時(42)=の遺体が見つかった「大崎事件」の第3次再審請求について、福岡高裁宮崎支部(根本渉裁判長)は12日、「事故死の可能性」に言及し、殺人などの罪で服役した義姉の原口アヤ子さん(90)の再審開始を認めた。昨年6月の鹿児島地裁決定を維持し、検察側の即時抗告を棄却した。共犯とされた原口さんの元夫(故人)の再審開始も認めた。

 福岡高検が特別抗告すれば審理は最高裁に移るが、断念すれば地裁で再審が始まる。弁護団は原口さんが高齢であることを踏まえ、特別抗告しないよう高検に申し入れた。確定判決は、当時の法医学鑑定を基に男性の死因を窒息死と認定、親族の自白から「タオルによる絞殺」としていた。

 高裁は、第3次請求で弁護側が提出した法医学鑑定を新証拠として認め、死因は転落事故による出血性ショック死だった可能性が高いと指摘。元夫らの「首を絞めた」とする自白は鑑定と整合せず「不自然で核心部分に変遷がある」として信用性を否定した。男性は遺体で発見される前、酒に酔って自転車のまま側溝に転落した経緯があり「既に死亡していたか瀕死(ひんし)の状態だった現実的可能性がある」と説明。殺人事件とする前提は根拠を欠き「確定判決の事実認定に合理的疑いが生じた」と結論付けた。

 原口さんは捜査段階から一貫して否認。殺害を裏付ける物証はなく、知的障害のある元夫ら親族3人が「(原口さんに)犯行を持ち掛けられ、実行した」などとした自白と、「共謀する場面を見た」とする義妹の証言などから首謀者として有罪認定されていた。

 弁護側は第2次、第3次請求で、元夫らの自白や義妹の証言内容を分析した「供述心理鑑定」を提出し、「実体験に基づかない可能性が高い」と主張。地裁決定は全面的に採用し「捜査機関による誘導の疑いがある」として自白などの信用性を否定し、再審開始の結論を導いたが、高裁は「心理鑑定は手法も内容も不合理だ」として証拠価値を認めなかった。

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 福岡高検・金子達也刑事部長の話 決定の内容を十分に検討し、上級庁とも相談の上、適切に対処したい。


 大崎事件 1979年10月15日、鹿児島県大崎町で農業男性=当時(42)=の遺体が自宅横の牛小屋の堆肥から見つかった。県警は義姉の原口アヤ子さん(90)と元夫ら親族計4人を殺人や死体遺棄の疑いで逮捕。原口さんは一貫して否認したが81年に懲役10年が確定し満期服役した。95年に再審請求、2002年に鹿児島地裁は再審開始を認めたが、福岡高裁宮崎支部が取り消し、第2次請求も退けられた。15年7月に第3次請求。鹿児島地裁は昨年6月、原口さんと元夫の再審開始を認め、検察側が即時抗告した。

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■特別抗告19日期限

 大崎事件の再審開始を認めた12日の福岡高裁宮崎支部決定を受けて、福岡高検は期限の19日までに最高裁に特別抗告するか検討する。特別抗告しなければ、決定が確定し、原口アヤ子さん(90)と元夫(故人)の再審が鹿児島地裁で始まる。

 特別抗告は、高裁決定が憲法や判例に違反している場合に申し立てることができる。再審開始の要件は「無罪を言い渡すべき『明らか』で『新たな』証拠が見つかったとき」とされており、検察側が今回の高裁の判断がこれに反していると判断するかどうかが鍵となる。

=2018/03/13付 西日本新聞朝刊=

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