佐世保 離島防衛の要に 陸自水陸機動団27日に発足 隊員の輸送体制見通せず

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 防衛省は27日、陸上自衛隊の部隊運用を一元的に担う陸上総隊と、離島防衛の専門部隊である水陸機動団を新設する。中国の軍拡、北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射などを踏まえ、指揮命令系統を一本化するとともに南西諸島の防衛力を強化する狙いだ。水陸機動団は陸自相浦駐屯地(長崎県佐世保市)の西部方面普通科連隊を基に新設する。1954年の陸自発足から最大の組織改編になる。

 陸自は現在、北部、東北、東部、中部、西部の五つの方面隊が並立し、傘下に計15の師団・旅団がある。防衛相の指揮監督下で各方面総監(陸将)がそれぞれの方面隊を運用している。

 だが、日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中で「有事や災害に迅速に対応するため、全国規模で部隊を運用する司令部機能が必要」との声が上がり、2013年に閣議決定された中期防衛力整備計画に陸上総隊の新設が盛り込まれた。

 総隊は各方面隊の上部に位置付けられ、トップに司令官(陸将)を配置。海上自衛隊の自衛艦隊、航空自衛隊の航空総隊と並び、防衛相直轄で運用される。海自、空自と同様の仕組みができることで、3自衛隊の統合運用や巨大災害への対応も、よりスムーズになると期待される。司令部は陸自朝霞駐屯地(東京都練馬区など)に置く。

 相浦駐屯地に新設される水陸機動団は、敵に奪われた離島にオスプレイや水陸両用車などで上陸、奪還する任務を想定する。上陸作戦に強い米海兵隊を手本にしており「日本版海兵隊」とも呼ばれる。規模は発足時に約2100人、18年度末に約2400人となる予定だ。陸自トップの山崎幸二陸上幕僚長は22日の記者会見で「離島侵攻への対処能力の向上、米国や海上自衛隊との連携強化を図る」と述べた。

 ただ、有事の際に水陸機動団の隊員らを運ぶ輸送機オスプレイの佐賀空港配備計画は、地元漁業者の了承が得られていない。2月には、佐賀県神埼市で陸自攻撃ヘリコプターの墜落事故が起きた。山崎陸幕長は「(配備計画に)事故の影響があることは否定できない。事故の解明に全力を尽くすことが一番重要だ」と説明。水陸機動団の実効性ある運用については「今後しっかりと検討していきたい」と述べるにとどめた。

■受け入れ期待と不安 騒音や危険性懸念 隊員増で経済効果

 水陸機動団を受け入れる長崎県佐世保市は海軍や自衛隊、米軍とともに発展してきた街。「国防のためなら」と市民の理解があり、隊員増に伴う経済効果への期待もあって、新部隊への表だった反対の動きはない。ただ、新拠点建設が進む地区の周辺では、国際情勢などもあって見通しにくい「日本版海兵隊」の“今後”への懸念の声も聞かれた。

 水陸機動団は、九十九島に面する相浦駐屯地に本部を置き、佐世保港内の崎辺地区13・4ヘクタールを分屯地として主要部隊の水陸両用車部隊を配備する。分屯地の新施設は今年12月に完成予定。発足時の隊員約2100人のうち約1840人が市内を拠点とする。2002年に同駐屯地に約660人の西部方面普通科連隊が発足して以来の大幅増となる。

 施設建設に伴う工事の増加と、隊員や家族の流入による経済効果について、佐世保商工会議所は工事関連で約96億円、隊員や家族の生活面で年間約43億円と試算する。自衛隊と地元企業の取引促進に取り組む商議所基地支援特別委員会の飯田満治委員長(69)は「佐世保は日本全体の防衛の要になる。隊員支援の態勢を整えたい」と語る。

 「歓迎一色」というわけではない。13年まで崎辺地区に駐機場があった米海軍のホーバークラフト型揚陸艇(LCAC)では騒音問題が起きており、自宅近くに新分屯地ができる男性(81)は「佐賀空港に配備計画があるオスプレイが飛んで来るかも」と新たなトラブルを懸念する。さらに水陸機動団に起因する事故や「標的」となる事態になれば、反対運動が起きる可能性があると、地元住民らは指摘する。

■軍事ネットワークの中心に

 軍事ジャーナリスト前田哲男氏の話 北朝鮮の脅威、中国の海洋進出を念頭に置いた陸上自衛隊の「西方重視」の流れの中で、佐世保に水陸機動団ができる。相浦駐屯地は従来、教育隊を主とする静かな駐屯地だったが、戦闘部隊の駐屯地に変わる。オスプレイ配備が計画される佐賀空港や日出生台演習場(大分県)などとの軍事ネットワークの中心地になる。米海兵隊岩国基地(山口県)の最新鋭ステルス戦闘機F35を搭載可能な米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」も佐世保基地に新たに配備された。国防において、佐世保の重要度が増していることは間違いない。

=2018/03/25付 西日本新聞朝刊=

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