共通テスト、民間活用に大学は及び腰 「合否判定に使わない」東大の方針が影響 疑問の声相次ぐ

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 2020年度から始まる大学入学共通テストの英語で民間検定試験を活用することに、大学側から疑問の声が相次いでいる。東京大は「合否判定に使わない」方針を示し、九州の国公立大でも慎重な意見が出ている。民間試験活用は大学入試改革の目玉だが、早くも波紋が広がっている。

 「内容や目的が違い、大学で必要とする技能を民間試験で本当に保証できるのか難しいところがある」。九州大の23日の記者会見で、入試担当理事の丸野俊一副学長は民間試験活用に慎重な姿勢を見せた。慎重なのは九大に限らない。西日本新聞が九州の19の国公立大に問い合わせたところ、活用する方針をはっきり示した大学はなく、ほとんどが今後検討するとした。

 こうした姿勢は、東大の方針が大きく影響している。東大の福田裕穂(ひろお)副学長は10日の記者会見で「(合否判定に)使わない可能性が極めて高い」と踏み込んだ。国立大学協会が8日の総会で、民間検定試験の成績活用方法のガイドライン案を公表した直後の発言。民間試験では、入試に必要な公平性の担保などに疑問があるためだ。

 「東大の方針表明で風向きが変わりつつある」と話すのは福岡県立大の入試担当者。九大の丸野副学長も「最終段階で東大のような揺れ動きが出た。今後、便乗する大学が出てくる可能性があり、どこも戦々恐々としている」と話す。

 文部科学省が民間試験にこだわるのは、英語4技能のうち「話す・書く」を、センター試験と同様の50万人規模で測るには、費用と労力がかかり、民間試験を活用した方が効率的との考えがあるからだ。

 ただ、民間試験は目的がさまざまで、日本の大学入試を想定したものではない。英語のスピーキングテストを開発し、検証を続けてきた京都工芸繊維大の羽藤由美教授(応用言語学)は、複数のテストで能力を比べることに批判的。「異なる物差しで測った成績を比べることはできない。国主導で4技能を測定するテストを開発するか、利用する試験を一本化する方法を考えるべきだ」と話す。

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 全試験実施福岡だけ 地域格差、検定料負担に不安も 九州7県調査

 2020年度から導入される「大学入学共通テスト」の英語で活用する民間検定試験に認定された23試験について、現時点で全てを受験できるのは九州7県で福岡県だけにとどまる。各試験の実施主体は、20年度時点では会場を増やす方針で、大学入試センターも「最大限の努力を求める」とするが、高校教諭ら関係者からは地域間格差や検定料の経済的負担を懸念する声が上がっている。

 認定された試験は7団体の8種類。同じ種類でも等級ごとに一つの試験とみなされ試験数は23となる。現在、九州7県で受験できるのはTOEIC(L&R)とGTEC、英検。その他は熊本、鹿児島両県が5種類などとなっている。

 宮崎県は4種類が受験可能だが、ある山間部の学校では、校内で実施しているGTECと英検以外を受けるには1時間以上かけて中心部に出向く必要がある。「過疎地の受験生が不利になり、学校を志願する生徒も減るのではないか。もっと情報通信技術が普及してから取り組むべきだ」と40代男性教諭は注文する。

 センターは原則として全都道府県で毎年度複数回実施を要件とするが経過措置も設けており、20年度に一部で実施されない試験も出てくるとみられる。

 検定料の負担もネックだ。新試験は1回当たり5千円台から2万5千円超も。各団体は一定条件で検定料の低減を検討するとしているが具体策は示されていない。受験生は4~12月に受けた試験の中から事前に登録した2回分の結果を大学入試に利用できる。

 登録した試験の受験回数に制限はなく、福岡県の高校で進路指導をする40代男性教諭は「何回も受けられる生徒の方に良い成績が出るだろう。経済的な理由が成績に影響する可能性はある」と指摘する。

 各試験は高校学習指導要領との整合性が図られ、結果は語学力の国際標準規格で評価される。学習塾「英進館」(福岡市)高等部の西谷博史さんは「対策のしやすさなどにより、ある程度受験する試験は絞られていくだろう」と話した。

 福岡教育大の中島亨教授(英語音声学)は「国際標準規格は6段階評価で、他教科と異なって1点刻みではなく正確な比較は難しい。これだけ課題が多い中、導入を急ぐ必要があるのだろうか」と疑問視した。

=2018/03/27付 西日本新聞朝刊=

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