議員なり手確保なるか 新たな町村議会制度提言 議論が活発化/メリット不明 「形」先行、地方に不満も

離島を除き九州で最も少ない定数8の宮崎県西米良村議会。庁舎建て替え計画に伴い、議員は仮議場で定例会に臨む=8日
離島を除き九州で最も少ない定数8の宮崎県西米良村議会。庁舎建て替え計画に伴い、議員は仮議場で定例会に臨む=8日
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九州大法学研究院(行政法)田中孝男教授
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 総務省の有識者研究会が26日に提言した小規模町村議会の新制度は、自治体の判断で議員数を少数にしたり、逆に兼業中心の多数にしたりと、人口や財政規模に関係なく一律の現行の議会制度を、大きく変える仕組みだ。ただ、なり手不足に悩む九州の町村議員などからは、肯定的な受け止めだけでなく、「これで根本解決になるのか」といった懐疑的な見方や、「メリット、デメリットが分からない」と戸惑いの声も上がる。果たして、議員確保の抜本策となるか-。

 「人口減に加え、九州豪雨被災が影響し、立候補に二の足を踏んでいる人がいる」。4月17日の告示まで約3週間と迫った福岡県東峰村議会(定数10)選挙を前に、大蔵久徳議長は苦渋の表情を浮かべる。村の人口は約2100人。立候補予定者は今のところ8人で「定数割れ」が現実味を帯びているからだ。

 人口1万人未満の地方議会を対象とし、研究会が提言した二つの制度は、高額報酬で少数の専業議員による「集中専門型」と、議員の兼業や兼職を緩和する「多数参画型」。大蔵議長は「集中型で報酬を上げても逆に議会の門戸が狭くなり、立候補者が増えるとは思えない。二つの制度の善しあしが見えない」と首をかしげる。

 「大川には使い物にならない制度だ」。議員のなり手不足打開へ有権者が議案を審査する「村総会」を一時検討し、研究会発足のきっかけをつくった高知県大川村議会(定数6)の朝倉慧(あきら)議長も手厳しい。「3人にまで減らすと、予算や条例などの重要な審議がきちんとできるのか。少数意見も含めた住民の声をくみ取れるのか」と疑問視する。

 既に集中型と似た手法を導入した自治体もある。離島の長崎県小値賀町議会(定数8)は2015年、九州で最低ランクの月額18万円の議員報酬を50歳以下に限って30万円に引き上げた。しかし直後の町議選当選者の最年少は57歳で、対象者はいなかった。「議員になるのがカネ目当てになる」との批判もあり、今月、関連条例を廃止した。立石隆教議長は集中型について「なり手不足解消にならないのでは」と指摘する。

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 一方で賛同意見も。福岡県町村議長会長の坂本東二郎苅田町議長は「人口規模といった事情に応じ、100人や少人数議会など議会の姿は柔軟であるべきで、提言は是としたい。若者や女性などいろんな人が出てきて意見し合うのが理想の議会だ」と理解を示す。

 熊本県産山村議会(定数8)の山本慶剛議長も「議会は議論する場。集まりやすい夜間などに総会のような形で多くの議員が参加し、議論を活発化させたい」と多数参画型を歓迎した。

 人口約1200人の宮崎県西米良村は2011、15年と議員選(定数8)が連続無投票で、今月20日告示の村長選も5回連続の無投票となった。なり手不足は深刻で、黒木定蔵村長は「多数型で、100人単位の議員がいたとして意見がまとまるのかといった課題はあるが、新制度は地方のニーズに基づいたものであり、自治体が自由に選べる点は評価できる」と話す。

 とはいえ、住民にとって最も「身近な民主主義」である地方議会の「形」の議論だけが先行することへの不満の声もある。黒木村長は「大事なのは、報酬の多寡ではなく議員個々人の活動だ」と主張。小値賀町議会の立石議長は「議会とは何か、議員とはどうあるべきかを考え、議会の質や住民の自治意識を高めることが重要だ」と強調する。

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 「選択制」評価、実効性は疑問 九州大法学研究院(行政法)の田中孝男教授

 総務省の有識者研究会が提言した新しい地方議会制度について、行政法が専門の田中孝男九州大法学研究院教授に聞いた。

 新制度は町村に選択の幅を持たせる点で評価できる。だが、議員のなり手不足解消と議会活性化につながるのか疑問が残る。

 小規模町村は既に定数が非常に少なくなっており、これ以上は無理との思いが強く、「集中専門型」は選ばれないだろう。議員報酬を上げて議会が活性化できるかは不透明だ。少ない議員に自治を任せるのは、地方分権からも遠ざかる。少なくなった議員と議論する「議会参画員」は裁判員制度に似ているが、裁判員の辞退率が6割超の現状も認識しておく必要がある。

 「多数参画型」で示された議員の兼業制限緩和は、一時的な策として有効かもしれない。ただ議決対象を制限すれば、議会が議決機関から諮問機関になる恐れもある。定数が増えて多くなった議員全員が、まちづくりに主体的に参画するとも思えない。

 国は新制度のメリットとデメリットを具体的に示した上で、仕組みをつくる必要がある。町村も国任せではなく、議会、住民参加、住民自治の在り方を模索していかなければならない。

=2018/03/27付 西日本新聞朝刊=

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