忖度? 前川氏の講演に後援拒否 首相の地元・下関市教委 北九州は承認

前川喜平氏による講演会の告知チラシ(左が北九州市分、右が山口県下関市分)
前川喜平氏による講演会の告知チラシ(左が北九州市分、右が山口県下関市分)
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 山口県下関市で14日に開かれる前川喜平・前文部科学事務次官の教育関連の講演会を巡り、下関市教育委員会が主催団体からの後援依頼を断っていたことが分かった。一方、同じ趣旨で同日に開かれる北九州市での前川氏講演会については、北九州市教委が後援を決定。自治体によって判断が分かれた。下関市は安倍晋三首相や林芳正文科相の地元。前川氏は政権に批判的な発言をしており、識者から「何らかの忖度(そんたく)が働いたのでは」との指摘が出ている。

 両市の講演会はいずれも地元の市民団体が主催。教育格差や子どもの貧困問題をテーマに、前川氏と元文科省官僚の寺脇研氏が講師を務める。

 下関市教委は主催団体に対し、2月26日付で「国会でも発言の真偽が議論されている前川氏を、市教委が応援、支持していると捉えられかねない」などとして後援しない旨を通知した。市教委によると、後援については営利目的や、特定の政治、宗教を宣伝する内容ではないといった基準がある。今回は「その他後援を行うことが不適当と認められるもの」という項目に該当すると判断したという。

 市教委への後援依頼は昨年度278件あり、断ったのは今回を含め2件。担当者は「政治的な配慮はしていない」と説明した。

 一方、北九州市教委は3月29日に後援を決定。下関市と同様の基準があるが、問題ないと判断した。北九州市教委幹部は「市民が自主的に企画する社会教育活動の一環であり、拒否する理由はない」と語る。

 前川氏の教育に関する講演会は昨年12月に愛知県西尾市で、今年2月に北海道旭川市でも開かれたが、それぞれの地元市教委は「政治的なものではない」として後援を認めている。

 今月15日に前川氏の講演会を開く広島県尾道市の市民団体は「自治体は政府の顔色をうかがっているように見える。政治的に偏向しているとみなされ、後援されない」と考え、後援依頼自体を控えたという。

 前川氏を巡っては、名古屋市の市立中学での同氏の講演内容について、文科省が市教委に報告を求めたことが明らかになっている。

■背景に政治的配慮

 尾木直樹法政大特任教授(臨床教育学)の話 下関市は安倍首相の地元でもあり、市議などから文句が出て市政を混乱させたくない、との政治的配慮があったのだろう。主催者が後援依頼を自ら控えたというケースは逆忖度とも言え、市民が行政に期待できないとなれば民主主義の死滅につながる。

■幅広い議論の場を

 施光恒(せ・てるひさ)九州大准教授(政治学)の話 元文科省官僚の立場から教育問題を論じるというケースであり、認めるべきだった。政治的な中立とは政権を支持する、支持しない両側の考えを、できるだけ幅広く聞いて議論できる環境を整えることではないか。極端な内容を除き、行政は広く後援などを認めるべきだ。

=2018/04/07付 西日本新聞朝刊=

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