「奇跡のスゴ技」米粒や髪の毛もスライス…世界で1台の切断機 福岡の刃物メーカーが開発

真っ二つになった記者の名刺。左面には西日本新聞のロゴマークなどが透けて見える
真っ二つになった記者の名刺。左面には西日本新聞のロゴマークなどが透けて見える
写真を見る
細い髪も碁盤目状に9分割
細い髪も碁盤目状に9分割
写真を見る
立てた米粒を薄くスライスすることもできる
立てた米粒を薄くスライスすることもできる
写真を見る
世界で1台の名刺切断機
世界で1台の名刺切断機
写真を見る

 薄い名刺をさらに真っ二つに薄切り!? アニメ「ルパン三世」の石川五エ門も真っ青な切れ味の切断機が福岡県柳川市にあると聞いた。可能にしたのは、ダイヤモンドの次に硬いという超硬合金で作った独自の刃。産業用精密刃物メーカー「ファインテック」(本木敏彦社長)が開発した。名刺だけではない。米粒や髪の毛をミリ単位未満でスライスすることも可能だ。目指すは「切断革命」。同社を訪ね、奇跡のスゴ技を目撃した。

 「名刺をよろしいですか」。同社の担当者に促され薄紙の名刺を差し出した。機械にセットし作動ボタンを押してわずか15秒。薄皮をはぐように、名刺が見事に裂けていた。

 名刺切断の構造はいたってシンプル。空気で吸引して名刺を切断壁に押しつけ、刃をまっすぐに下ろす。刃の薄さはなんと2万分の1ミリ。名刺切断機は取引先に技術をアピールするためのもので昨年4月に本社ショールームに置いた。

 なんのためにそんな刃物を開発したのか。スマートフォンや自動車エンジンなど現代社会の中枢を担う機器の部品を製造する上で、実は薄切りの技術は極めて重要なのだという。鋭利な刃先のニーズは高く、納入先は約300社に上る。その技術は高い評価を受け、2015年、中小企業庁の「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選出。昨年度は開発・加工グループの7人が「第7回ものづくり日本大賞」(経済産業省など主催)の経産大臣賞を受賞した。

 名刺切断の技術を知ったのは、社長が市役所に大臣賞の報告に訪れたのがきっかけだった。半信半疑だったが、見事な技術に度肝を抜かれた。

   ■    ■

 ファインテックは1985年、半導体の金型部品メーカーとして創業。2008年のリーマン・ショックで受注が激減し、金型を作る上で必要だった刃先に特化していくことになった。

 同社の刃物の切れ味が最大限生かされている製品の一つがスマートフォン内の「高機能フィルム」。多機能操作を可能にする膜のようなもので、社長室・グループ長の本木博史さん(26)は「通常の刃との大きな違いは切断面」と説明する。つまり、通常の刃で切ると、切断面には目では見えないひび割れなどができる。そのため仕上げの研磨や洗浄、乾燥などの2次工程が必要なのだが、同社の刃ではそうした工程が省け、コスト削減にもつながるという。

 このほか、米粒をミリ単位未満でスライスしたり、髪の毛を碁盤目状に9分割したりすることも可能だ。

 今回、工場を見学しながら、ある特徴に気付いた。

 研磨や顕微鏡での品質チェックなどの現場に女性の姿が多いのだ。同社によると259人の従業員のうち女性が7割。「女性の繊細な手先を加工に生かしてもらっている」という。

 同社が目指すのは、柳川から世界一の産業用刃物メーカーになること。「うちの刃は何でも切れると言っても過言ではないと思いますよ。男女の仲以外はね」とちゃめっ気たっぷりに本木さんが笑う。ただ、その言葉の裏側に、高い技術を可能にした刃物作りにかける情熱と自信が垣間見えた。

来月11日に見学会

 本紙読者向けにファインテック社(柳川市西浜武575-1)のショールームと工場の見学会を開きます。5月11日午後1時半から、20人限定。参加希望者は、はがきに住所、氏名、年齢、勤務先(所属先)、電話番号を明記し、西日本新聞社柳川支局(〒832-0075、福岡県柳川市柳町3-1-2)まで。4月24日消印有効。応募多数の場合は抽選を行い、当選者に電話で連絡します。問い合わせは同支局=0944(72)3179。

=2018/04/17付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]