「見せる復興」被災地ツアー 南阿蘇の観光業者が案内 熊本地震2年

ほとんどの建物がなくなったペンション群「メルヘン村」で、再建の方針について話す栗原有紀夫さん(右)=21日午前、熊本県南阿蘇村
ほとんどの建物がなくなったペンション群「メルヘン村」で、再建の方針について話す栗原有紀夫さん(右)=21日午前、熊本県南阿蘇村
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 熊本地震で被災した熊本県南阿蘇村の観光業者が21日、復旧途上の観光施設を案内するバスツアーを開いた。2年を経てもまだ営業を再開できていない温泉宿やペンションの経営者らが「車掌」役を務め、復興の歩みを紹介しながら県内外の約150人に将来の再生を誓った。「必ず立ち上がるから、その時まで忘れないでほしい」と。

 「皆さんが立つ場所に建物があり、素晴らしい眺望でした」。九州最古のペンション群「メルヘン村」。風が吹き抜ける丘の上で、経営者が順々に被災当時と現状を説明した。

 地震前にあったペンション6軒は全半壊。集落の復旧事業は道半ばで、丘全体に傷痕が残る。福岡県糸島市の山本重春さん(66)は「年2回は泊まりに来ていたが全く変わってしまった」と周囲を見渡した。

 言葉を失う参加者に、村内での移転を模索する「風の丘・野ばら」の栗原有紀夫さん(53)は「光は見えていないけどあきらめてはいない。再開を果たしたい」と力強く宣言した。

 熊本では、工事中の熊本城を公開したり、震災の跡を巡る行程で修学旅行を誘致したりと「見せる復興」が定着しつつある。今回のツアーも「現状を知ってもらい、営業再開まで関心をつなぎとめたい」という、記憶の風化への危機感が背景にある。村ではまだ観光業者の約2割が足踏み状態にあるからだ。

 壊滅的な被害を受けた地獄温泉「清風荘」では、河津謙二副社長(54)の案内で参加者が周囲を歩いた。硫黄の香りが漂う泉源付近に土砂や岩が横たわる。

 来年の全面再開を目指すが、周辺の道路事情が悪く、遅れる可能性もある。被災を免れた露天風呂「すずめの湯」のみを日帰り湯として先行再開する予定で、佐賀県鳥栖市の温泉ソムリエ清永恵子さん(51)は「1日でも早く遊びに来たい」と足湯を楽しんだ。

 「道のりは長いが、阿蘇の観光は必ず元に戻ると信じている」と、ツアーを主催した「南阿蘇村観光復興プロジェクト交流協議会」の代表で清風荘社長の河津誠さん(55)は前を向く。「知ってほしいのは被害の現状だけではない。僕らが今でも夢を持っていることを伝えたい」

=2018/04/22付 西日本新聞朝刊=

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