なぜ?「より安全な検査法あるのに」経験不足に指摘も 不妊治療で死亡 医療関係者や患者に衝撃

 全国に知られるセントマザー産婦人科医院(北九州市八幡西区)の不妊治療手術で女性患者が死亡、院長ら3人が書類送検された今回の事件は、医療関係者や患者に衝撃を与えた。高額医療に対する自治体の公的支援が進み、「子を授かりたい」という切実な思いを抱く患者が全国から集まる同医院。一方、死亡した女性が受けた卵管に空気を入れる「通気検査」については「より安全な検査法があるのになぜ」(関係者)と指摘する声も上がる。

 「通気検査をしているところを探す方が難しいくらい」。西日本で不妊専門クリニックを開業する50代男性医師は首をかしげる。医師によると、卵管の通り具合などを確認する手法は現在、子宮口から造影剤を入れてエックス線撮影する「子宮卵管造影検査」が主流。合併症の危険をはらむという通気検査は、エックス線装置を備えた医院では15年ほど前から行われなくなったという。

 男性医師は、空気が血管に入って気泡となり、血流を防ぐ栓となる「空気塞栓(そくせん)」の危険性について「子宮内膜は血流が良く空気を吸収しやすい。腹腔(ふくくう)鏡手術で穴を開けるので空気は出て行くと思っていたのではないか」と、医師側の経験不足、知識不足を指摘した。

 捜査関係者によると、全国数十カ所の産婦人科医院や専門家に話を聞いたところ、ほとんどが現在は通気検査を実施していないという回答だったという。

 厚生労働省子ども家庭局によると、治療費を軽減する「特定不妊治療支援事業」の利用件数は、2016年度で14万1890件。支援事業が始まった04年度から約8倍に増加した。同局は「高齢出産といわれる30代以降の利用が多い」としている。福岡県などによると、県内でも年間約5千件の利用があるという。

 患者や地元住民によると、セントマザーには全国から不妊に悩むカップルが訪れており、待合室は常に混雑しているという。通院する北九州市の女性(29)は「みんなすがる思いで来ている。事故は残念で、怖い。何が起きたのかはっきり説明してほしい」と話した。

=2018/04/24付 西日本新聞朝刊=

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