雌牛「耶馬渓の光に」 地域の若手が繁殖に共同購入 山崩れ1ヵ月

耶馬渓を盛り上げようと高級繁殖用雌牛を購入した脇坂公章さん(右)ら若手畜産農家=11日午前、大分県玖珠町
耶馬渓を盛り上げようと高級繁殖用雌牛を購入した脇坂公章さん(右)ら若手畜産農家=11日午前、大分県玖珠町
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若手農家が500万円で購入した繁殖用の雌の子牛
若手農家が500万円で購入した繁殖用の雌の子牛
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 大分県中津市耶馬渓町金吉(かなよし)の大規模山崩れ発生から11日で1カ月が経過した。被災した4棟のうち間一髪で助かった畜産農家は、牛6頭が土砂にのまれ、生活再建の見通しが立たない。「同じ牛飼いとして力になりたい」。同じ地域の若手畜産農家が、県内の仲間とともに繁殖用の高級雌牛を購入して、災害で落ち込む地域を元気にしようと動きだした。被災農家の再建にも役立てばと願う。

 山崩れでは、急斜面の下にあった民家4棟が巻き込まれた。うち飛瀬(とびせ)幸男さん(77)方は、間一髪のところで避難。飛瀬さんを含む一家4人は無事だった。ただ、肉用牛6頭を飼っていた牛舎は巨岩と土砂に埋まった。「山崩れでコメも作れなくなり、収入は年金だけになった。家の解体などやることはたくさんあるけど、先のことは何も考えられない」。飛瀬さんは肩を落とす。

 「いい牛を育てて、耶馬渓の名を売り出して、地域を元気にしよう」。声を上げたのは飛瀬さん方から約2キロ、同じ金吉地区に住む脇坂公章さん(36)だった。「名産地」ではないものの、耶馬渓町に肉用牛農家は約20戸ある。脇坂さんは、父と3兄弟で乳牛と肉用牛計300頭を飼育している。飛瀬さんとは、酒を酌み交わしながら肥育について夜な夜な語り合う間柄だったという。

 脇坂さんは、県内で畜産を営む高校の同級生らと資金を出し合い4月下旬、昨年の全国和牛能力共進会第7区肉牛群で1位に輝いた雄牛の子(雌)を鳥取県で購入した。競り値は平均価格の8倍ほどで、過去最高クラスの500万円。子牛が1歳を迎える夏には、卵子を採取して人工授精し、各農家で繁殖させる。子牛が生まれたら、飛瀬さんにも提供したいという。

 耶馬渓町の地元の畜産農家からは「若者に負けずいい牛を育てていかんとな」と奮起する声が相次ぐ。中津下毛和牛改良組合の久保秀記組合長(64)は「高齢化が進み農家が減少する中で、本当に頼もしい」と語る。脇坂さんは「全国から注目されるような牛を育てて、古里に希望の光をともしたい」。地域と共に前を向く。

=2018/05/12付 西日本新聞朝刊=

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