地震後に急逝“兄貴”のために…「消防団の甲子園」へ団員結束 熊本・西原村で4年ぶり予選

操法大会に向けた訓練に励む熊本県西原村消防団第5分団第2班の団員たち=16日、西原村
操法大会に向けた訓練に励む熊本県西原村消防団第5分団第2班の団員たち=16日、西原村
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長女莉央さんと笑顔で写真に納まる島野真一さん(遺族提供)
長女莉央さんと笑顔で写真に納まる島野真一さん(遺族提供)
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 熊本地震で甚大な被害が出た熊本県西原村で、「消防団の甲子園」とも呼ばれる全国消防操法大会の村予選が27日、4年ぶりに開かれる。村予選で2度の優勝経験があり、地震当時、村消防団の副分団長を務めていた島野真一さん=享年37=は、被災者のために奔走した後、急逝した。残された同僚や後輩は、兄貴肌で大会に懸ける思いが人一倍強かった島野さんの期待に応えるため、訓練に励む。

後輩思い「嫌われるようなことも言ってくれた」

 「操作始め!」。照明がともった夜のグラウンドに、指揮者の号令が響いた。息の合った整列、ホースの素早い連結。第5分団第2班の団員たちは、一つ一つの動作の完成度を高めるように、繰り返し体にたたき込んでいた。

 ホースの延長や連結、伝令役を担う1番員、樋口拓郎さん(29)はかつて、島野さんが指揮者を務めたチームでも1番員だった。幼い頃から「真一兄ちゃん」と呼んで慕ってきた。後輩思いで「嫌われるようなことも言ってくれる人でした」。指先の角度や姿勢など実際の現場での活動につながる「評価」ポイントは特に厳しく教えられたことを思い出す。

被災者のため奔走…突然の別れが

 2016年4月、村を震度7の激震が襲う。副分団長に就任したばかりの島野さんは、倒壊家屋からの住民救助や深夜の防犯パトロールに駆け回った。自らも避難生活を送りながら、村の中学校の避難所が閉鎖するまでの2カ月間、テントで指揮を執り続けた。

 同年9月4日未明、島野さんは自宅で胸の痛みを訴え、間もなく亡くなった。心筋梗塞だった。消防団員や村職員、祭りの仲間…。葬儀には斎場に入りきれないほど多くの友人らが集まり、突然の別れを惜しんだ。

「兄貴」に恥じない結果を残したい

 消防団活動は行事ごとの集まりも頻繁で、規律や団結が重んじられる。分団長の渡辺隆由貴さん(40)は、活動を敬遠しがちな若い世代をどう引っ張るか、2人で意見を交わしたことを忘れない。「真ちゃんが団員に厳しく接していたのは、もしものときに団員を死なせるわけにはいかないから。今だから理解できる」

 小型ポンプの機械を操作する3番員の中村栄希(ひでき)さん(35)は、応援してくれる地域の人、消防団OBの思いを背負って大会に挑んでいた島野さんの姿に「真ちゃんに恥じない結果を残したい」と誓う。近づく本番。団員たちの心に「兄貴」の叱咤(しった)激励の声が響いている。

=2018/05/21付 西日本新聞朝刊=

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