介護保険料、広がる自治体格差 熊本・南阿蘇村、地震後増え1500円増 長崎・長与町「閉じこもり予防」261円減

体を使ったゲームを楽しむ体操教室「お元気クラブ」の参加者=4月、長崎県長与町
体を使ったゲームを楽しむ体操教室「お元気クラブ」の参加者=4月、長崎県長与町
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 65歳以上の介護保険料の値上げが続く中、自治体間の格差が広がっている。熊本地震後、介護が必要な高齢者が増える被災地では引き上げが目立つ。一方、介護予防に励んだ効果が表れ、値下げを実現できた自治体もある。

 熊本地震で16人の「直接死」が出た熊本県南阿蘇村。介護保険料(基準月額)は1500円増の7300円と、九州で4番目に高い。全国平均(5869円)を約1400円も上回る。

 自宅が全壊し、仮設住宅に夫婦で暮らす男性(88)は、避難所で肺炎にかかったのを機に状態が悪化。地震前は運転も入浴も1人でできたが、仮設では段差がある浴室は使えず、近隣住民との交流も減った。日中はテレビの前に座っているか、介護ベッドに寝ているか。

 要介護2は変わらないものの、週3日の短期入所、週1回の通所介護など、介護サービス頼りの日々を送る。寄り添う妻(86)と「地震さえなければ元気でおれたのに…」と口をそろえる。

 村の高齢化率は38・8%(3月末)、要介護認定率20・3%(2017年)と、地震前の想定を超えて上昇。17年度の介護給付費は約14億円(推計値)と、15年度より2割増えた。

 健康推進課は「仮設住宅への転居、家族との別居など環境の変化で認知症が進んだり、施設に入居したりする人が増えている」とみる。「復興途上で負担を増やしていいのか悩んだ」と葛藤をにじませる。

■健康寿命

 前期比261円減の5400円となったのは、長崎県長与町。06年から徹底した介護予防に取り組んできたたまものだ。

 比較的元気な高齢者が対象の体操教室、認知症予防教室、ボランティアによる茶話会が公民館などで開かれ、16年度は計約800人が参加した。さらに、看護師資格を持つ町職員が75、80、85、90歳がいる全世帯を訪問し、孤立しがちな人を早めに見つけて体操教室などに連れ出す「閉じこもり予防」にも力を入れる。

 この結果、介護を受けながら過ごす平均要介護期間は男性2・86年、女性6・62年(10年)が、15年は男性1・56年、女性3・80年と5年で大幅に短縮。昨年末の要介護認定率17%は10年前より2・7ポイント下がった。

 9年前から体操教室に通う男性(84)は「みんなと体を動かし、弁当を食べるのが生きがい」。今春、老人ホーム入居も考えたが「ここに来られなくなるからやめた」と元気に1人暮らしを続けている。

 介護保険課の辻田正行課長は「きめ細かく取り組めば効果は上がる。今後も早めに手を打って、健康寿命をさらに延ばしたい」と意気込む。

■差額3548円

 こうした自治体による差は開く一方だ。九州で最も高い福岡県介護保険広域連合Aグループ(8048円)と、最も安い宮崎県高千穂町(4500円)の差額は、3548円に上る。

 旧産炭地が多い同広域連合Aは、高齢化率が32~41%と高く、サービス単価が大きい入所施設も多いため、今後も保険料の高騰が予想される。一方、高千穂町は要介護認定率が14・3%と低い。予防事業に加え、子どもと同居する人も多く、サービス利用が抑えられていることが反映した。ただ、25年には介護給付費準備基金が底を突く見通しで、やはり将来的な負担増は避けられない。

 保険料を抑制している自治体では「認定基準が厳しくなった」との声も聞こえる。介護保険に詳しい北九州市立大の小賀久教授(社会福祉援助論)は「基準が厳しかったり、十分なサービスが受けられなかったりして保険料が安い地域もある。一方、サービスが豊富で利用しやすければ保険料も上がり、一概にどちらがいいとは言えない。ただ、上がり続ければ制度はいずれ成り立たなくなる。公費負担の割合を見直すなど、根本的な解決が必要だ」と指摘する。

=2018/05/22付 西日本新聞朝刊=

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