「避難する日々いつまで」所有者不明の土地、悩む住民 崩落した裏山、対策進まず 措置法施行に期待

2016年の台風で崩れたままの山。応急処置として掛けられたビニールシートも破れが目立つ=宮崎市高岡町
2016年の台風で崩れたままの山。応急処置として掛けられたビニールシートも破れが目立つ=宮崎市高岡町
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 所有者不明の土地に悩まされている人は、九州にも多い。6日、成立した特別措置法が施行されれば、公益目的ならば期限付きで利用できるようになり、「塩漬け」土地の有効活用に一歩前進となる。ただ、所有者不明土地の増加に歯止めをかけ、減少させる手だてにはならず、根本的な解決には遠い。

 宮崎市高岡町の仁田脇由香さん(43)の自宅の裏山は、2016年9月の台風16号で崩れた。「夜中に『ドーン』と音がして、土砂が壁を突き破って家に入ってきた」。いつまた崩れるかと気が気でない。

 自治体に安全対策を要望したところ、裏山の登記上の所有者は47人。故人も含まれていた。自治体が何らかの工事に着手する場合、相続関係を洗い出し、相続人となる全員の承諾を得なければならず、遅々として進んでいなかった。

 特措法は、道路整備や防災対策といった公共事業に絡み、登記された人の親族に調査しても所有者が特定できない場合、知事の裁定で土地を取得できるよう改めるなど、手続きを簡素化した。裏山の安全対策も進む可能性がある。

 「大雨が降るたびに避難する日々がいつまで続くのか」。そう気をもんでいた仁田脇さん。「法成立は心強い。対策を進めていただければありがたい」

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 公共事業以外にも、悩まされるケースは少なくない。

 JR九大学研都市駅(福岡市西区)近くで商業施設やマンションの建設を計画する地権者の男性(70)は言う。「まるで探偵みたいに土地の所有者を調べましたよ」

 11・8ヘクタールを整備する計画のうち、ある1区画の相続関係人は31人に上った。故人や県外在住者も含まれ、男性は司法書士に依頼して一人一人と連絡をとり、取得を進めたという。

 公益目的を掲げる特措法は、営利目的の事業を対象に含めていない。

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 増田寛也元総務相ら民間の研究会の推計によると、所有者不明の土地は16年現在、全国で九州の面積を上回る約410万ヘクタールに達する。有効な対策をとらないと、40年には約720万ヘクタールにまで増えるという。管理する手間や税負担を嫌い、相続時に登記しない人が増えているためだ。

 所有権問題に詳しい福岡県司法書士会の梅原健・司法書士は「特措法は対症療法にすぎない」と指摘する。増やさないためには、現在は任意である不動産登記の義務化を検討する必要があるが、特措法は踏み込まなかった。

 日本では、土地の所有は「権利」として保障され、手放すことは法律の規定にない。政府は1日、登記の義務化や、所有者が土地を放棄する制度を検討する方針を示した。もっとも、放棄された土地を誰が管理し、管理する費用を誰が負担するのか、制度設計は容易ではない。

=2018/06/07付 西日本新聞朝刊=

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