震災のたび犠牲、身近な塀が「凶器」に 違法状態の把握も困難…自治体は苦慮 大阪地震で児童ら死亡

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 大阪府北部で震度6弱を観測した地震では、女子児童ら2人がブロック塀の倒壊によって犠牲になった。九州では、2005年の福岡沖地震や16年の熊本地震でも倒壊による死者が出ており、身近な塀は「凶器」になりかねない。法律に基づく定期点検は基本的な内容に限られ、一般住宅は対象外だ。老朽化した塀も多いとみられ、多くの自治体は、リスクを適切に把握できない現状に頭を悩ませている。

 18日の地震では、大阪府高槻市の市立小のプール脇にあるブロック塀が崩れ、通学中の小学4年の女子児童が亡くなった。市側は3年に1度、建築基準法に基づく塀の法定点検を実施することになっていたが、直近の調査に塀の状況の報告はなく、「違法」状態のまま、事実上放置されていたとみられる。

 国土交通省などによると、点検は塀を含めた建物全体の状況を調べるもので、異常や劣化がないか確認する程度。塀に関しては目視が中心という。西日本新聞が九州7県と3政令市の各教育委員会に聞いたところ、いずれも学校内の塀の法定点検を行っていた。

 福岡沖地震を経験した福岡市は05年に緊急点検を実施。市内のブロック塀1万8815カ所のうち668カ所を「危険」と判定した。除去工事費を一部補助し、所有者に改善を促す文書を送るなどして約7割の484カ所が改善された。学校内の危険判定箇所はほとんどなくなったという。

 北九州市も、法定点検とは別に独自の点検を毎年実施。通学路や避難経路に面した塀も対象に行い、17年度は市立学校27校の塀を撤去、補修した。

 一方、福岡県は「問題があれば報告を受ける仕組みで、どこが危険かは把握していない」。自治体の対応には温度差もある。

 法規制強化の契機になった1978年の宮城県沖地震では、犠牲者28人のうち、10人以上が塀の下敷きで亡くなった。同県では小学校のスクールゾーンにあるブロック塀を全数調査し、危険な塀の所有者に毎年指導してきた。その取り組みもあって、2011年の東日本大震災では「県民の認識が高まり、被害を抑えることができた」(同県建築宅地課)という。

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 隣家との境界などに個人が単独でブロック塀を設置する際は、自治体などに届ける必要はない。法定点検の対象は自治体が指定する公共施設や病院、商業施設などで一般住宅は含まれない。「基準に満たないブロック塀がどれくらいあるか把握しきれないのが現状」(熊本県土木部)という。

 福岡大の古賀一八教授(建築防災)が熊本地震後に行った調査では、塀の倒壊で犠牲者が出た熊本県益城町に258カ所ある塀のうち、9割近くに当たる約220カ所が壊れ、鉄筋が基礎まで入っていないなど、建築基準法の安全要件を満たしていなかった。

 地震後補修されたブロック塀にも同法に適合しないものが確認されたという。古賀教授は「熊本地震の教訓が生かせていない」と警鐘を鳴らす。

 塀の安全診断などを請け負う公益社団法人日本エクステリア建設業協会福岡県支部によると、基準を満たさない塀ならば価格を2割程度安くできるという。「コストを抑えたい施工主の要望を受け、手抜き工事をする業者はいるだろう」との見方を示した。

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安全性まず自己診断を

 ブロック塀の高さや鉄筋の太さ、間隔などの安全要件(構造基準)は、建築基準法の施行令に1971年から明記されている。裏側から支える「控え壁」の設置や基礎部分に鉄筋を入れるなど、倒壊しにくい施工を義務化。78年の宮城県沖地震後は、高さ3メートル以下から2・2メートル以下に変更された。ただ、改正前に設置された塀は適用外となる。

 福岡県建築指導課は「見かけはしっかりしていても安全性に欠けるものがある」として、5項目=イラスト参照=の自己診断を所有者に呼び掛けている。

 高さやひび割れ、控え壁(長さ40センチ以上)が塀の長さ3・4メートルごとにあるか-は目視で確認できる。一方、鉄筋(直径9ミリ)の有無や、地面から30センチ以上の深さまで基礎が打ち込まれているかは外見から判断できない。古い塀で施工者や図面、建設時の写真が不明の場合、金属探知機や基礎部分の掘り起こしによる耐震診断が必要になる。

 全九州コンクリートブロック工業組合によると、耐震診断は原則無料で、取扱業者を紹介している。同組合=092(413)1636。

=2018/06/19付 西日本新聞朝刊=

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