九州豪雨 湿った気流、2方向から朝倉に 線伏降水帯の原因「特異」 九州大研究班が解析

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 まもなく1年となる昨夏の九州豪雨について、九州大の研究班は、大気が不安定だった福岡県朝倉市付近の上空に、暖かく湿った空気が2方向から集中的に吹き込み続けたため、線状降水帯が局所的に長時間、居座り続けたとする研究成果をまとめた。2012年の九州北部豪雨は、梅雨末期にみられる「典型事例」だったが、昨年の豪雨の類似例は1997年に鹿児島県出水市で21人が犠牲となった土石流災害しか見当たらず、専門家は「まれな気象状況がもたらした災害」としている。

 九大大学院の川村隆一教授(気象学)らは、九州豪雨が発生した昨年7月5日の気象条件を基に大気の状態をシミュレーションで再現した。それによると、日本海側の高気圧が強まった影響で、中国地方にあった梅雨前線が九州近くまで南下。そのため、東シナ海から対馬海峡へ抜けていた気流が南へ押され、被災した朝倉市付近へ方向を変えた。太平洋高気圧のへりに沿って入り込む気流もあり、この2方向からの気流が朝倉市付近で集中。上空で冷えて積乱雲を次々と発生させたとみられるという。

 その結果、積乱雲が連なってできる線状降水帯は移動せず、約9時間にもわたり局所的に相次いで発生、大雨を降らせ続けた。

 川村教授によると、朝倉市付近の大気が非常に不安定だったことも影響した。朝倉市の風上に位置する福岡県久留米市の気温は当日午後1時で30度超。対馬海峡付近の海面水温も平年に比べ2度高かった。一方、上空5キロ付近では、この時期としては比較的冷たい氷点下7度の寒気が流入。上昇気流が発生し、積乱雲をつくりやすい状態だった。

 これに対し、2012年の九州北部豪雨は、湿った空気の固まりが九州に押し寄せたことが主な原因。線状降水帯は1カ所に居座ることはなく、熊本県を中心に九州各地で同時多発的に発生、まとまった状態の積乱雲が九州全域を覆い、雨を降らせた。この現象は14年8月に77人が犠牲となった広島土砂災害や、1993年に鹿児島市を中心に死者・行方不明者49人を出した「8・6水害」などと同じで、気圧の谷間に湿った空気が流れ込みやすい梅雨末期のような気象条件で発生しやすいという。

 川村教授は「2017年の九州豪雨は非常にまれな気象現象だった。甚大な災害を引き起こす線状降水帯の発生メカニズムを解明することで、予測精度の向上につなげたい」としている。

=2018/06/21付 西日本新聞朝刊=

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