「悲劇は二度と」九州豪雨、決意の訓練 高齢夫婦が犠牲に…自責の念抱える男性 福岡県東峰村

福岡県東峰村の岩屋公民館で、早期避難の大切さを訴える和田将幸さん=24日午前
福岡県東峰村の岩屋公民館で、早期避難の大切さを訴える和田将幸さん=24日午前
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 昨年7月の九州豪雨後、被災地の福岡県東峰村で24日に初めて行われた防災訓練に、村で自動車修理業を営む和田将幸さん(44)の姿があった。和田さんは豪雨の際、近所の高齢夫婦を救えなかったとの思いを抱き、自責の念にかられてきた。「もう一人の犠牲者も出さない」。あの日の体験を踏まえ、いざというときは一緒に早めに避難する大切さを参加者に呼び掛けた。

 午前8時半、訓練開始を告げるサイレンが村に響くと、和田さん宅に近所のお年寄りなどが集まり始めた。高齢になると体力だけでなく、避難を見極める判断力も衰える。そう考える和田さんは訓練を前に、自宅近くの住民たち10人ほどに呼び掛けていた。

 和田さんは豪雨の日のことが忘れられない。自宅から約6キロ離れた事務所にいた和田さんは、あまりにも激しい雨に近所の高齢者たちが心配になり、避難を呼び掛けるため自宅がある山手に向かった。

 1軒ずつ訪ね歩いた中に、熊谷国茂さん=当時(81)、千鶴代さん=同(81)=夫婦がいた。「避難した方がいいっちゃない」と伝えると、脳梗塞で体にまひがあった国茂さんを気遣い、千鶴代さんは「(行かなくて)よかろう」と答えた。

 自宅にとどまるのであれば、山や川とは反対側の部屋にいるよう促すと、千鶴代さんは「ありがとう」と応じた。びしょぬれで冷えた体を温めようと和田さんが自宅に戻った直後、大きな地鳴りが響いた。外を見ると、さっき声を掛けたばかりの熊谷さんの家が土砂にのみ込まれていた。その後、熊谷さん夫婦は倒壊家屋の下から発見された。

 「無理にでも連れ出すべきだったのか…」。和田さんは苦悶(くもん)した。

 想像できないほどの災害だったが、悲劇は二度と繰り返したくない。自分なりに対策を思案し、異変を感じたらまずは近所で集まり、みんな一緒であれば避難所にも行きやすいと考えた。普段から付き合いが深い地域という利点もある。

 24日の訓練で和田さんは、自宅に集まった住民と一緒に行動し、地域が一時避難先と決めていた神社前、そして指定避難所の岩屋公民館へと、約30分かけて車に分乗して避難した。

 公民館では住民約60人が、万一の備えを真剣に話し合った。その中で和田さんは訴えた。「砂防ダムは土砂で既に満タン。次は土砂が滑り台のように落ちてくる可能性がある。とにかく早めに避難してください」

=2018/06/25付 西日本新聞朝刊=

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