[対話×住民自治](上) 町の課題を自分ごとに 福岡・大刀洗町

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 枝豆の収穫期を迎えた福岡県大刀洗町。この町には無作為に選ばれた住民が町の課題を話し合う「住民協議会」がある。地域を代表する団体のトップが集まりがちな会議だが、町はあえて無名の住民を集める。

 JAで働く中島悠子さん(35)は昨年秋、役場から届いた「委員候補」の通知に驚いた。大刀洗町で暮らして2年。町政への関心はほとんどなかったし、住民協議会も知らなかった。

 町は住民基本台帳から、性別と年代を分けて500人の委員候補を選ぶ。例えると、くじ引き。裁判員制度に似ている。承諾したのは「町のお得な情報が聞けるかもしれない」と思った中島さんを含む20~60代の26人。高校生2人を加えた28人が委員になった。

 12月の初会合。委員席は中島さんの知らない人ばかり。テーマは防災だった。

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 会議は4回で、土日の日中に役場の会議室に集まった。町は避難所運営マニュアルへの意見を求めた。委員は町職員を交えた5、6人のグループに分かれて考えを出し合う。持論をぶつけ合う議論ではなく、ざっくばらんな対話に近い。

 今年2月の最終回。町は36ページの厚いマニュアル原案を示した。災害時、約80人の職員では全てのことに対応できない。住民の力が必要になる。中島さんは「災害が起きて2時間までにやるべきことを1枚にまとめた方がいい」と提案した。

 住民協議会を経験して、中島さんは自身の変化に気付く。避難所を実際に目で確かめた。防災以外の町の情報が知りたくなり、ウェブサイトで調べた。

 会の進行や論点整理をする政策シンクタンク・構想日本(東京)の総括ディレクター、伊藤伸さん(39)は言う。「身近な課題を住民同士で話し合いながら、自分ごととして考える。それが住民協議会の目的だ」

 委員を無作為抽出するのは、一人でも多くの住民に参加してもらうため。「有識者」で固める会議より、意見は生活実感を帯びて多様になる。

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 住民協議会が発足して4年。提案はいくつも具体化した。誰もが使う不燃ごみ袋の小型化(20リットル)もその一つ。安丸国勝町長(73)は「住民力を上げるために協議会を続ける」と話す。

 住民協議会の委員経験者は180人。この中から、子育て支援ボランティアやPTAの役員になる人が出ている。大刀洗町のことを語り合う場をつくろうと、OBOG会も発足した。

 発起人はパート従業員の古賀そのみさん(47)。幅広い年齢の委員や役場職員との対話を重ね、町の課題が人ごとでなくなってきた。「行政や他人任せにして解決を待つのではなく、自分で考えて行動するのが大切だと思う」

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 「まちづくりは住民が主役」とよく言われます。でも、実感できる人は少ないかもしれません。暮らしに関わる大切なことが、知らないうちに決まっていることはありませんか。

 私たちも、大切なことを決める行政や議会、選挙に無関心になっていないでしょうか。地方選挙の投票率も低下傾向です。

 こうした状況を変える試みが、あちこちで芽生えています。私たちの地域のことは私たちで考えよう-。こうした住民自治の実践を取材しました。キーワードは「対話」です。

=2018/06/22付 西日本新聞朝刊=

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