「潜伏キリシタン」世界遺産登録 ユネスコ 禁教期の信仰評価 長崎、熊本 集落など12資産

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 中東バーレーンで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)第42回世界遺産委員会は30日、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)を世界文化遺産に登録することを決めた。2世紀半に及ぶ江戸幕府の禁教政策にもかかわらず、民衆がひそかに信仰を継続した独特の文化的伝統の証拠として評価された。国内の世界遺産は、昨年登録された「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡)に続き22件目。九州では4件目。

 「潜伏キリシタン遺産」は、キリシタンが禁教期に信仰や生活の場とした集落を中心に長崎県内11資産と熊本県内1資産の計12資産で構成。潜伏キリシタンが信仰を神父に告白した「信徒発見」の舞台となった大浦天主堂(長崎市)や、貝の模様を聖母に見立てて信仰した「天草の崎津集落」(熊本県天草市)がある。

 政府は2015年に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として14資産を推薦したが、ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)から禁教期に焦点を当てるように促され、いったん推薦を取り下げた。禁教期の12資産に絞り込んで17年に再推薦し、今年5月にイコモスが登録が適当と勧告していた。

 30日の世界遺産委の審議では「イコモスとの協力の結果で、他国の手本となる事例だ」などと高い評価が相次いだ。その上で追加勧告を決議し、すでに廃絶した教会跡の記録資料を作成し、遺産内の新規開発事業の影響を評価することを日本政府に求めた。

 一方、この世界遺産委での世界自然遺産登録を目指していた「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄)は5月の勧告で厳しい評価を受け、政府は6月に推薦を取り下げた。環境省は20年夏の登録を目指す。

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■離島、過疎地の保全課題

 【解説】長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産は、12資産のうち10資産を「集落」が占める。多くは離島などの過疎地にあるため、人口が減っても集落が保全される仕組みが必要になる。

 潜伏キリシタン関連遺産は、当初の「教会群」から禁教期に焦点を当てる構成に見直した結果、潜伏信仰が営まれた集落も対象資産となった。総面積は5566ヘクタールで、九州で近年登録された「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡)の98ヘクタール、「明治日本の産業革命遺産」(長崎など8県)の307ヘクタールを大きく上回る。一見して世界遺産と分かりにくい資産もある。

 過疎集落が自力で世界遺産を保全することは難しくなっている。

 潜伏キリシタン遺産がある離島では、地元の高齢信者が教会守を続けることができず、移住してきた信者でない若手を後継にした。集落の歴史もよく知らないが、関係者は「やむを得ず依頼した」という。人口減が進む「白川郷・五箇山の合掌造り集落」(岐阜、富山)では、合掌造りの補修に集落外からボランティアが駆け付ける。

 教会の維持に充てるために官民が設けた基金は、寄付を財源としているので潤沢ではない。カトリック長崎大司教区は構成資産の大浦天主堂(長崎市)を改修し、拝観料を2015年度以降に2回引き上げたが、観光客が多いからこそ成立する例外的な保全対策だ。

 地元や信者以外の理解と協力なしに、集落を保つ人と資金は確保できない。文化庁の担当者は「潜伏キリシタンの暮らしから濃密な物語が浮かび上がる。その語り手を育てる努力が不可欠」と指摘する。

 潜伏キリシタンには、世界的に希少な価値と物語がある。その共感を広げる工夫が官民に求められる。

=2018/07/01付 西日本新聞朝刊=

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