不審者対策に悩む学校 地域開放と安全確保どう両立 設備に差、監視に限界

香椎東小正門には、「防犯カメラ作動中」の文字があった=2日午後、福岡市東区
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 学校内に不審者が侵入する事件が全国で相次いでいる。2001年の大阪教育大付属池田小(大阪府池田市)での殺傷事件以来、学校の安全対策は課題とされてきたが、出入りを完全に監視することは困難。子どもたちが集い、災害時には避難場所としても活用される学校は、地域に開かれた場所であるべきだという指摘もある。安全確保と地域づくりの拠点としての機能をどう両立させるか、現場では模索が続く。

 「あの事件以来、児童も教師も、安全意識を高く持たせるようにしている」。刃物を持った男が乱入し、児童8人が犠牲となった池田小の荒川真一副校長は振り返る。

 同校では事件後、学校の出入り口を一つに絞り、防犯カメラ12台、非常ベル314個を設置した。防犯の知識などを学ぶ「安全科」の授業を毎週開き、不審者を見掛けたらすぐに非常ベルを鳴らすよう児童に指導。不審者侵入を想定した教師向けの訓練も年6回、実施しているという。

 池田小の事件を受け、文部科学省は危機管理マニュアルを作成。15年度の文科省の全国調査では、16年3月末時点で、ほぼすべての小中学校が各校の事情に沿った独自のマニュアルを整備した。交番襲撃後、警察官の拳銃を奪い、小学校に発砲した富山市の事件の場合、マニュアルを参考に、警察から連絡を受けた学校が児童を体育館へ避難させ、教師がさすまたを持って出入り口を警戒した。

 2日に若い男が小学校の女子トイレに侵入する事件が起きた福岡市では、富山市の事件を受け、市教育委員会が市立小と幼稚園に不審者対策徹底の緊急通知を出したばかり。不審者発見時の素早い通報や複数職員での対応などを記したマニュアルの確認に加え、戸締まり強化や来校者の受け付け名簿への記入徹底を求めている。

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 防犯カメラや、警察や民間警備会社との連絡装置の設置などハード面の整備も進む。ただ、九州でも6月22日に福岡県久留米市の小学校校庭で侵入した男が女児の顔をたたくなど、事件は後を絶たない。

 銃撃事件が相次ぐ米国では、校舎を施錠し、内部から不審者ではないことを確認できた場合に限り、内部に入ることを許可するケースもある。日本では、そこまでの徹底した監視は予算の制約などから難しい。防犯カメラを設置しても監視までは手が回らず、録画だけという学校も多い。

 そもそも、「地域に開かれた学校」という性格がある以上、過度な監視は住民とのあつれきを生みかねない。学校には、行事やPTA活動などで保護者や地域住民が日常的に出入りする。「来校者全てを不審者扱いできない」と福岡市教委の担当者。「学校の実情や地域性に応じて取り組む必要があり、一律の対策は難しい」(長崎県教委)という声もある。

 地域防犯に詳しい立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は、低コストの対策として「入り口から受付まで誘導する矢印のテープを廊下に貼る」ことを提唱。訪問者がライン上から外れた所にいれば子どもも侵入者と判断でき、神奈川県藤沢市などで成果を上げているという。学校の敷地を囲う塀を見通しの良いフェンスにするなど、「住民の手も借りながら、地域と連携して学校の安全対策を考える必要がある」と指摘する。

=2018/07/03付 西日本新聞朝刊=

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