夫が撮った風景、私もカメラを手に 日田市の山本佳代さん 九州豪雨1年

山本岳人さんの遺影に好きだったワインを供える妻の佳代さん=5日午前、大分県日田市
山本岳人さんの遺影に好きだったワインを供える妻の佳代さん=5日午前、大分県日田市
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 土砂崩れで亡くなった大分県日田市小野地区の山本岳人さん=当時(43)=の妻佳代さん(40)は5日朝、同地区の岳人さんの実家で夫が好きだった赤ワインをグラスに注いで供えた。「1年たったね。(雨なのはあなたが)泣いているの。いつか恵みの雨になるといいね」。心の中でそう話しかけた。子ども3人と暮らす佳代さんは最近、カメラが趣味だった夫を追うように写真を撮り始めた。

 消防団員だった岳人さんは昨年7月6日、見回り中に土砂崩れに巻き込まれた。街で仲むつまじい夫婦を見ると心が苦しくなり、泣く日もあった。「いつか実家のパン店でかりんとうを売ろう」「子どもが独立したら、新婚旅行で行った北海道にもう一度」。夫婦のささやかな夢は奪われた。

 「無理やりにでも私が(家族の)歯車を回して、一から家族を始めたい」。そんな決意から昨秋、市中心部に引っ越し、夫の実家のパン店を手伝いながら暮らしている。臨床心理士を目指す長女は今春、夫が通った高校に進学。中学生の次女、小学生の長男も気丈に母を気遣ってくれる。

 今年5月、夫の友人たちが開いたイベントの会場入り口で夫が撮った写真をスライドで流した。四季の風景、子どもの笑顔…。9千枚近い写真から選んでいると自分でも撮りたくなった。

 遺品のカメラは、夫を思い出し胸がつかえてしまうから、新たにカメラを買った。子どもが通った小学校を、残された写真と同じ構図で撮った。夫が立ったであろう場所で、存在を感じながらシャッターを切る。

 7月の日田祇園祭には夫も参加していた。昨年は足が向かなかったが、今年はカメラを持っていくつもりだ。「あなたのように人生を楽しもうと思う。そして2人の夢を少しずつかなえていきたい」。言葉に力がこもった。

=2018/07/06付 西日本新聞朝刊=

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