不通続く日田彦山線 九州豪雨1年、復旧工事未着手 費用負担、路線維持策……JRと自治体“綱引き”

代行バスの車窓からは、豪雨災害の爪痕が残る現場が多数見られる=6月27日
代行バスの車窓からは、豪雨災害の爪痕が残る現場が多数見られる=6月27日
写真を見る
写真を見る

 昨年7月の九州豪雨で被災したJR日田彦山線は添田(福岡県添田町)-夜明(大分県日田市)で不通となり、今も住民にとって不便な代行バスによる運行が続いている。多額の復旧費がかかることもあり、JR九州は被災から1年を経ても復旧工事に着手できていない。どう復旧するかや費用負担を巡り、JR九州と沿線自治体の協議は始まったが、復旧後の路線維持策も課題として浮上。両者の思惑は交錯し、復旧の時期は見通せない状況だ。

 6月下旬の平日、午前11時半添田発日田行きの代行バスに乗車した。乗客は記者1人。運転手によると朝夕は通学の学生、日中は通院や買い物客らが主に利用している。渋滞での遅延や、冬には積雪で部分運休もあったという。

 被災前、鉄道が約1時間弱で結んでいた添田-日田を、代行バスは約1時間半かけて走る。添田-夜明の輸送密度(1キロ当たりの1日平均通過人数)は、鉄道が131人(2016年度)だったのに対し、代行バスでは29人に減った。

 午後3時35分日田発添田行きにも乗った。通学で代行バスを利用する日田高3年の黒木藍子さん(17)は「バスだと定時に来ないこともあるし、時間もかかる。列車を早く復活させてほしい」と訴えた。

   ■    ■

 鉄路復旧に向けてJR九州や福岡、大分両県、沿線自治体が協議する会議は4月に発足した。

 復旧費についてJR九州は、五つの橋の架け替えなどに約70億円が必要とし、単独での負担は厳しいと表明。これに対し両県は、公的な災害復旧事業の活用など復旧策の見直しで、JR側の負担は減らせると提案し、JRも精査中だ。

 一方、黒字経営の鉄道会社も一定の条件を満たせば、原則として国と自治体が復旧費の最大4分の1ずつ支援する改正鉄道軌道整備法が6月に成立。JR九州が申請すれば日田彦山線も適用対象になる見込みだ。

 ただ新たな費用負担が生じることになる自治体側は、適用の同意に慎重姿勢を見せている。JRも、申請には長期的な運行確保のための計画提出が必要だが、今後も利用者の大幅増加が見込めない中で、態度を明確にしないままでいる。

   ■    ■

 日田彦山線の全線復旧後、どう維持していくかも大きな焦点になっている。

 自治体が線路などを保有して鉄道会社が運行する「上下分離方式」は各地に導入例があり、JR九州は「こだわってはいない」(青柳俊彦社長)としながらも、一つの方法とみる。これに対し日田市の原田啓介市長は、分割民営化に伴いJRへの財政支援をしてきた国が「路線の適切な維持」を求めていることなどを念頭に「JRの直営が当然で、義務だ」と突っぱねる。

 地域の公共交通としてどう早期復旧し、残していくか。JRと自治体側の双方に難しい決断が迫られている。

=2018/07/08付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]