石木ダム訴訟、住民側敗訴 長崎地裁「国事業認定は適法」

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 長崎県と同県佐世保市が計画している石木ダム(同県川棚町)を巡り、反対する住民や地権者ら109人が国に事業認定取り消しを求めた訴訟の判決で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は9日、水源確保と洪水調節を目的としたダム計画について「公共の利益が認められる」として国の判断を適法と判断、訴えを棄却した。原告側は控訴する方針。

 訴状などによると、石木ダムは1975年に事業採択されたが、移転対象のうち13戸は土地の買収に応じず、建設予定地に残った。国は2013年に事業認定し、県が未買収用地の強制収用手続きを進めたため、地権者らは15年11月に提訴していた。

 判決で武田裁判長は、佐世保市が生活用水や工業用水の需要が増加すると見込んだ試算について「不合理な点があるとはいえない」と判断、ダムにより新規水源を確保する必要性を認めた。洪水対策では、遊水池などと比較して経済性、社会性の両面からダム建設を選択した県の判断に関しても「裁量を逸脱したとはいえない」とした。

 一方、移転対象となる67戸については代替宅地が用意され、生活再建の措置が取られたとして「失われる利益が大きいとはいえない」と指摘。土地収用法の要件を満たすとした国の判断は適法と結論付けた。

 県によると、ダムは当初、総事業費160億円で1979年の完成を目指したが、現在は2022年の完成を見込み、総事業費は285億円と試算。16年度末現在で150億円超を投入している。

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■行政の代執行が現実味

 長崎県佐世保市の利水と同県川棚町の治水を目的とする石木ダム事業には当初から一部地権者が反対し、1982年に県が機動隊の動員で強制的に測量して以来、対立構図が続く。今回の司法判断を追い風に、行政側は「代執行」のタイミングもうかがい始めた。

 「最初からダムありきの議論を押し付けている」。判決後の県との交渉。原告の一人はこう迫ったが、県はダムの必要性を説くばかり。その場に中村法道知事の姿はなかった。原告側の退庁後に記者団の取材に応じた知事は「打開策として司法がある。その判断をおくみ取りいただきたい」。

 ここ数年、反対派住民たちは、世論を味方に活動を活発化させていた。アウトドアメーカー・パタゴニアが支援を表明。自然と調和して生きる原告家族の暮らしを追うドキュメンタリーも制作され、今年3月の長崎市での試写会では音楽家坂本龍一さんが自然を守る重要性を語り、注目を集めた。

 だが既に予定地の地権者の8割は移転。行政関係者は土地を強制収用する行政代執行を見据える。知事も「方向性をお出しできるようにする」と踏み込んだ。「古里に住み続けたい」という半世紀にわたる住民たちの願いは、厳しい状況に追い込まれた。

【ワードBOX】石木ダム建設事業

 長崎県と同県佐世保市が、石木川流域の同県川棚町岩屋郷に治水と水源確保を担う県営ダムとして計画。県は1972年に予備調査に着手、国は75年に新規事業として採択した。総貯水量548万トン、総事業費約285億円で2022年度の完成を見込む。移転対象67戸のうち54戸は移転。13戸は立ち退きを拒否、計画撤回を求めている。県は県収用委員会に対し、建設用地の強制収用を可能とする手続きを進めている。

=2018/07/10付 西日本新聞朝刊=

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