水門閉鎖で支流から氾濫 筑後川、本流からの逆流防ぐ措置 西日本豪雨

【通常】住宅地などに降る雨は、下水道や川の支流を通って川の本流に排水される 【内水氾濫】大雨が降ると川の水位が上がる。川の本流の水が支流に逆流しないよう水門を閉じることで水があふれる
【通常】住宅地などに降る雨は、下水道や川の支流を通って川の本流に排水される 【内水氾濫】大雨が降ると川の水位が上がる。川の本流の水が支流に逆流しないよう水門を閉じることで水があふれる
写真を見る

 1500棟以上に達する福岡県久留米市の浸水被害は、大雨で水位が上昇した筑後川からの逆流を防ぐため、支流の水門を閉じたことによって水があふれる「内水氾濫」が主な原因だった。ある程度の氾濫は織り込み済みのはずだが、国、県、市ともに水門閉鎖に伴う避難の呼び掛けをしておらず、中小河川については正式なハザードマップも未整備だった。

 西日本豪雨では発達した雨雲が西日本全域をすっぽり覆い、広範囲に長時間大雨を降らせた。久留米市では降り始めから7日午前2時20分までの雨量が7月の平均降水量を上回り、48時間雨量で観測史上最大となる383・5ミリに。筑後川と同市の支流の水位は一斉に上昇した。

 国土交通省筑後川河川事務所によると、久留米市中心部に近い瀬ノ下観測所では、7月6日午後3時半に「水防団待機水位」(3・5メートル)を超え、同6時20分に「氾濫注意水位」(5メートル)を突破した。ピークは同11時50分の6・26メートル。「避難判断水位」(6・8メートル)まであと54センチに迫った。

 支流よりも筑後川本流の水位が高いと、本流から支流に逆流が起き、「被害は甚大になる」(同河川事務所)ことから、河川法に基づき、支流河口の水門を閉める決まりがある。同市周辺では6日昼すぎから支流の下弓削川、陣屋川、大刀洗川、山ノ井川などの水門を閉めて逆流を防いだ。一方、はけ口を失った支流は内水氾濫を起こした。

 内水氾濫は堤防決壊のような激流と異なり、じわじわと水位が上昇する。今回は同時多発的に発生し、家屋被害は床上床下浸水計約1500棟。人的被害はなかったが、自宅などに取り残された住民も多かった。

     **

 問題は水門閉鎖に関する住民への周知だ。同河川事務所は「避難の呼び掛けは河川管理者の県か、避難勧告などを出す市の役割ではないか」。県は「中小河川は水位が一気に上昇し、予測が難しい」。市は「避難指示や避難勧告の基準になっていない」としている。

 市は昨年、道路冠水マップを作成し、訓練でも活用したという。ただし、2012年の九州北部豪雨の冠水箇所を地図に落としたもので、地形や流量に基づくシミュレーションは行っていない。住宅の浸水被害想定もなく「ハザードマップにはなっていない」(市担当者)のが現状だった。

 過去に氾濫の経験があるかどうかによって、自治体や関係機関の対応には格差が生じる。

 九州豪雨の被災地、同県朝倉市の場合、12年の九州北部豪雨の際に異なる対応をしていた。市内の桂川の水門を閉めた後、内水氾濫が予想されることから、流域限定で避難勧告を発表。浸水が始まった時点で避難指示に切り替え、行政防災無線で避難を呼び掛けた。

 九州大大学院工学研究院の塚原健一教授(防災行政)は「防災対策は地域によって温度差がある。行政に頼り切ることなく、被災経験の少ない地域の住民も身近なリスクを把握し、危機意識を共有してほしい」と述べた。

=2018/07/11付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]