「昭和」にこだわる喫茶店 亡き店主の遺志継いだ常連客

拳を振り上げながら長谷川万大さんの演奏を聞く常連客たち=6月、北九州市小倉北区下到津の「憩いの場 昭和の時代」
拳を振り上げながら長谷川万大さんの演奏を聞く常連客たち=6月、北九州市小倉北区下到津の「憩いの場 昭和の時代」
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 「平成」が終わりに近づく中、「昭和」にこだわる喫茶店が北九州市小倉北区下到津にある。その名も「憩いの場 昭和の時代」。月に10日程度開店し、常連客が集ってギターを弾いたり、アコーディオンに合わせて歌謡曲を合唱したりと、30年前に終わった昭和を懐かしんでいる。

 「昭和70年生まれ。老け顔界のアイドルです」

 6月のある日。福岡県筑紫野市のシンガー・ソングライター長谷川万大(ゆうだい)さん(22)が店のステージに立つと観客の笑いが漏れた。実際は平成7(1995)年生まれ。昭和好きが高じた長谷川さんの定番のあいさつだ。「時代の空気感が合い、物心が付いた頃から好きだった」という昭和の歌をギターで弾き語りする。

 「星のフラメンコ」(66年)、「悲しくてやりきれない」(68年)、「ギャランドゥ」(83年)…。この日演奏したのは十数曲。店は幅広い年齢層の客で埋まり、歌を口ずさみ、手拍子をして盛り上がった。北九州市門司区のバス運転手山本潤治さん(50)は「若い人が自分たちの時代の歌を素晴らしいと歌ってくれている。うれしいね」と笑顔だった。

 「昭和の時代」のオープンは6年ほど前。保険・不動産会社を経営していた山下徹さん(故人)が、長男の玄徳さん(39)に社長を引き継いだのを機に始めた。

 貧しい家庭で育ち、昭和の時代をたくましく生きた徹さん。店には真空管アンプを置き、昭和の曲のレコードをかけた。歌好きが集まるようになり、アコーディオンの伴奏で歌謡曲を歌う歌声喫茶も始まった。

 近くの白石久夫さん(66)も常連客の一人。「歌が好きで居心地が良かった」

 徹さんは2015年に67歳で亡くなり、玄徳さんは白石さんらに店の今後を相談した。「徹さんの遺志を継ごう」。常連客の思いは一致。継続が決まった。

 店は現在、常連客が協力し、外部の人を呼んだ演奏会、歌声喫茶、パソコン教室などのイベントを開く。参加料やドリンク代を維持費に充てる。

 常連客からは「貧しくても助け合って生きていた」「スマホも携帯電話もなかったけど、人との距離が近かった」との声が漏れる。昭和の雰囲気を懐かしんで訪れる人は多い。

 玄徳さんは「常連客のおかげで店は、昭和にひかれた人が世代を超えて集う場になっている。時代は変わっても続けたい」と話す。

=2018/07/18付 西日本新聞夕刊=

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