「ぱくるぞ」愛知県警が圧力?供述拒否 金塊盗被告、捜査情報漏えい語らず

 福岡市のJR博多駅近くで2016年7月、約7億6千万円相当の金塊160キロが盗まれた事件で、窃盗罪に問われた野口直樹被告(44)と弟の和樹被告(43)の公判が10日、福岡地裁(丸田顕裁判長)であった。和樹被告は愛知県警の現職警察官による捜査情報漏えい疑惑について「そのことについては差し控えたい」と供述を拒否した。弁護人は、被告が供述態度を変えた背景に愛知県警による不当な圧力があった疑いがあるとして、同県警に抗議と事実関係の調査を求める申し入れ書を送った。

 和樹被告はこれまでの公判で、同県警組織犯罪対策課所属の警察官から福岡県警が通信傍受を実施する時期などの捜査情報を教えてもらっていたことを明らかにし、「犯罪ではないから警察が助けてくれていると思っていた」と主張していた。

 しかしこの日の被告人質問では、弁護側がこの疑惑について質問すると「差し控えたい」と繰り返した。「傍聴席に警察官がいることと関係があるか」との問いにも「あるかないかは分からないが、差し控えたい」と答えた。

 一方、両被告は「被害者側と合意があった」とあらためて無罪を主張。これに対し、検察側はそのような合意はなく、窃盗罪が成立すると反論した。

 起訴状などによると、両被告らは同年7月8日朝、警察官を装い、JR博多駅近くの貴金属店に金塊売却のため訪れた男性会社役員らから金塊などが入ったケースを盗んだとされる。

 事件では、両被告のほか中垣龍一郎被告(42)ら5人が同罪で起訴され、いずれも無罪を主張している。

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■知人に「ぱくるぞ」…迷惑掛かる

 「県警の捜査員が友人らに接触している。これ以上証言するとみんなに迷惑が掛かる」。10日にあった福岡地裁の公判で愛知県警の情報漏えい疑惑について供述を拒んだ野口和樹被告(43)は、3日に福岡拘置所で面会した記者にこう漏らしていた。

 「差し控えたい」。それまで弁護人の質問にすらすら答えていた和樹被告は情報漏えい疑惑に話が及ぶと急に口をつぐんだ。「愛知県警に(自分たちが事件に関わったと)申告したのに取り調べもなかったことから、犯罪にならないと確信したのではないか」と問い詰められると「それはあります」と答えたが、詳細は一切語らなかった。

 弁護人によると、和樹被告が供述を拒んだ理由は二つある。一つは兄の直樹被告(44)から「情報をくれた愛知県警を裏切るのはみっともない」とたしなめられたこと。もう一つが愛知県警捜査員からの周囲への「圧力」だったという。

 実際、接見禁止が解除された5月末に記者が初めて面会した際は「捜査情報を教えてもらっていた。裁判でしっかり証言したい」と話していた。ところが、今月3日に再度面会したときには「知人や友人が捜査員から『お前らとんでもないことをしてくれたな』『小さいネタでもぱくるぞ』と言われている。周りは『もう勘弁してくれ』と言っている」と態度を急変。記者が本心かどうかを尋ねると「本当はしっかり話したい。腹は立つけど仕方がない」と語った。

 昨年6月に本紙などが捜査情報漏えい疑惑を報じたことを受け、愛知県警は調査する方針を示していた。だが、福岡県警のある捜査幹部は本紙の取材に「(愛知県警が)今年3月ごろ、調査の打ち切りと関係者の処分はしない方針を伝えてきた」と明かす。

 10日にこの件について愛知県警に問い合わせたところ「現在、事実確認等をしている案件であり、回答は差し控える」。同日付で和樹被告の弁護人が送付した申し入れ書についても「届いていないのでコメントは差し控える」と回答した。

=2018/08/11付 西日本新聞朝刊=

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