「すげー」人魚に会える?観光船が人気 その正体は…

クラゲと戯れる幻想的な写真も(鮫島百桃子さん提供)
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船底のガラス越しに現れた「人魚」に喜ぶ子どもたち
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海面に現れた人魚姿の鮫島百桃子さん。子どもが次々と質問した
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 南国・鹿児島の海には人魚がいる。そんなうわさを聞きつけて胸が高鳴った。でも、ちょっと待てよ。正体は、イルカのような海獣の類いだったり、はたまたベテランの海女さんだったりするのではないか。淡い期待を抱きつつ、半信半疑で東シナ海へ向かった。

 鹿児島市中心部から車で約1時間の羽島(はしま)漁港(いちき串木野市)。羽島は、1865年に五代友厚ら薩摩藩士が英国に留学するため旅立った近代日本黎明(れいめい)の地だ。五代らが乗った船と同じ名前の観光船「オースタライエン号」(定員12人)に勇んで乗り込む。

 快晴で波も穏やか。漁港から約2キロ沖にある無人島の沖ノ島を目指す。15分ほどで島に近づくと、サルの群れがいた。船に同乗している子どもたちが、えさのイモを夢中で投げる。母親のおなかや背中に必死でしがみつく子ザルに、ほっこりした。

 突然、船長が船底にあるガラス窓を見るように促す。「ただいま人魚を見つけました!」。海中をのぞき込んでいた子どもたちが沸き立つ。「いた、いたっ」「おー、すげー」。ガラス越しで不鮮明だが、ゆったりと現れた人影は、なんだか下半身が魚っぽい。

 「こんにちはー。うふふふふ」。海面に浮上した姿はまさに人魚。鮮やかな青の尾ひれがくっきりと見える。しかも日本語と流ちょうな英語を話す。

 「息できるの?」「国はどこ?」「結婚は?」。矢継ぎ早の質問に答えた人魚は、名残惜しそうに別れを告げた。ジャブンと尾ひれをひるがえし、船底を通ってそのまま水中に消えた。

    *   *

 実はこれ、羽島在住のダイビングインストラクター鮫島百桃子(ももこ)さん(31)が演じる「マーメイドパフォーマンス」の一環という。観光船とタッグを組んで、オーストラリアに住んでいた幼少期から親しむ海の魅力を伝えている。

 「優雅で楽しそうに見せないといけません。人魚は意外と体力勝負なんです」。それもそのはず、リアルさを追求したシリコーン製のコスチュームは長さ150センチで、重さは14キロもある。それでも水中では、美しく見えるように、ひれの向きにまで気を使う。

 7年ほど前、会員制交流サイト(SNS)で海外の人魚パフォーマーを見て一目ぼれ。すぐに米国から「ひれ」を取り寄せた。3年前に県外から羽島に移り住んだ後、本格的に活動を始めた。

 ウミガメやクラゲと一緒に撮った写真や動画をSNSで発信したり、にぎわうビーチに人魚姿で突然現れて人々を驚かせたりしているそうだ。

 米国では、水族館でショーが催されるほど人気があるという人魚パフォーマンス。鮫島さんは、日本での知名度を上げるため、国内の人魚仲間と連携してイベントに出演している。泳ぎ方や海との向き合い方を教える「人魚講習」にも力を入れる。

 「海の生き物や人との一期一会は宝物です。日本でも人魚パフォーマーを職業として根付かせたい」。小麦色の肌で、白い歯をのぞかせて意欲を見せる鮫島さん。紺碧(こんぺき)の海には、果てしない夢が広がっていた。

〈メモ〉 人魚と観光船のコラボレーション企画(45分)は、4人以上の乗船客が集まれば運航する。大人2000円、小学生以下1250円。人魚姿で記念撮影できるマーメイド体験(半日)は7000円。ダイビングショップ「オーシャンダイアリー」=090(7863)0542。

=2018/08/21付 西日本新聞朝刊=

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