「かわいい盛りだった」祖父が心境を吐露 3児死亡飲酒事故から12年

3児を弔う地蔵の前で冥福を祈る祖父の大上謙一さん=24日午前10時40分ごろ、福岡市東区の妙徳寺
3児を弔う地蔵の前で冥福を祈る祖父の大上謙一さん=24日午前10時40分ごろ、福岡市東区の妙徳寺
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部長級職員による飲酒運転が発覚した直後にはインターネット上で受講できる「残り酒」に関する研修を実施した
部長級職員による飲酒運転が発覚した直後にはインターネット上で受講できる「残り酒」に関する研修を実施した
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 福岡市東区の海の中道大橋で3児が犠牲になった飲酒運転事故から25日で12年。3児を供養する地蔵がある同区の妙徳寺には24日、祖父母や地域住民ら約20人が訪れ、黙とうをささげた。祖父の大上謙一さん(74)は「かわいい盛りだった。12年間つらかった」と心境を吐露した。

 大上さんは、地蔵に亡くなった孫3人を重ねて「じいちゃん、元気しよるよ」と語り掛けたという。海の中道大橋には事故翌日に行ったのが最後だ。「カブトムシ捕りに行ってくるよ、と言ったのが最後の言葉になった」と声を詰まらせた。「飲酒運転のニュースを見るたびに教訓を生かしてほしいと思う。いつ自分に降りかかるか分からない」と訴えた。

 寺には近くの馬出保育所の園児51人も訪れ、花を手向けて冥福を祈った。

 海の中道大橋近くの商業施設では、2011年に福岡県粕屋町で起きた飲酒運転事故で高校1年の長男を亡くした山本美也子さん(50)が買い物客に飲酒運転撲滅を呼び掛けた。山本さんは「遺族は子どもが忘れられない。何かにつけて思い出してもらえるよう、伝えていきたい」と話した。

   ◇    ◇

福岡市、不祥事なお 撲滅へ模索続く

 12年前、3児の命を奪ったのは、福岡市職員による飲酒運転だった。市は、職員研修の徹底や厳罰化で再発防止に努めてきたが、今年5月には部長級の幹部職員の飲酒運転が発覚した。これだけでなく、市職員の飲酒運転は毎年のように繰り返されている。「幼い命を奪ったことを、あらためて自覚するしかない」。撲滅への模索がこれからも続く。

 「アルコールの吸収に影響する要因」。市職員が5月、パソコン上の文字を真剣に読んでいた。対象は約1万6千人の全職員。市は前夜のアルコールが翌日に影響する「残り酒」への理解を深めるため、インターネットなどで受講できる研修を急きょ実施した。その後、各職場での倫理研修でも「残り酒」をテーマとし、実際にアルコールチェッカーで数値を測定した。

 研修は、市幹部職員が基準値の2倍を超すアルコール分が検出され、酒気帯び運転容疑で逮捕された5月2日の直後に実施された。幹部職員は、市の調査に対し「(前夜の)酒が残っているとは思わなかった」と話した。部下を指導する立場でありながら、12年前の事故の教訓をないがしろにする不祥事となった。

 ただ、これまでも「残り酒」への注意喚起を含め、撲滅を目指してあらゆる手を打ってきた。飲酒運転は原則、懲戒免職と厳罰化を図った。退職金が支払われず、再就職にも困る免職後の人生を疑似体験する研修も導入した。

 毎年、全職員に飲酒に関するチェックシートの提出を義務付け、アルコール依存傾向が強い職員には専門医の受診を勧めている。業務用パソコンは、起動するたびに飲酒運転撲滅のメッセージが表示される。飲酒絡みの不祥事が続いた2012年には、高島宗一郎市長が異例の「自宅外禁酒令」を出したこともあった。

 それでも、飲酒運転は後を絶たない。3児死亡事故が起きた06年8月以降、職員の飲酒運転事案は14件に上る。「研修が漫然となっていないかいま一度『自分ごと』として捉えるよう意識を高めたい」と市幹部。

 高島市長は21日の記者会見で今年も職員が逮捕されたことについて「重大に受け止めている」と述べ、飲酒運転撲滅への決意をこう語った。「3人の幼い命を奪ったことを忘れず取り組みを続けるしかない」

=2018/08/25付 西日本新聞朝刊=

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