九大と熊大、女子合格率低く 得点操作は否定 九州10大学医学部調査 

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 東京医科大による不正入試問題を受け、西日本新聞は医学部医学科のある九州の10大学を対象に、2013年度~18年度入試の男女別の受験者数や合格者数などについてアンケートを実施した。九州大と熊本大は6年度全てで女子の合格率が男子の合格率を下回っていた一方、残る8大学は年度によってばらつきがあった。10大学とも、東京医科大が認めた不正な得点操作は否定した。

 調査は8月中旬から実施。九州の7国立大、3私立大に(1)過去6年度の一般入試や推薦入試の男女別の受験者数と合格者数(2)男女の合格率に差が生じた理由(3)女子受験者の減点や卒業者の子の優遇といった得点操作の有無-を聞いた。

 それによると、本年度の一般、推薦など全ての試験の受験者は男子6554人、女子3802人に対し、合格者は男子885人、女子466人。合格率は男子13・5%、女子12・2%となり、男子の合格率を1とすると女子は0・91倍だった。

 大学別の合格率を同様に比較すると、九州大と熊本大が6年連続して女子が男子を下回り、それぞれ九州大が0・53~0・9倍、熊本大は0・64~0・94倍で推移。九州大の担当者は「男女の区分なく選抜している。男女別に分析しておらず、理由は把握していない」。熊本大も「得点調整は行っておらず、学力に基づく公平・公正な選抜結果」と回答した。

 女子の合格率が最低だったのは16年度の鹿児島大で0・52倍。最高だったのは同年度の産業医大で1・54倍だった。両大学の他の年度をみると、鹿児島大0・94~1・32倍、産業医大0・88~1・35倍と変動があった。鹿児島大は「受験生の質によるものと考える」、産業医大は「公正に試験を実施している」と回答した。一般入試に限ると17年度の佐賀大は0・6倍だが、推薦など全ての試験を加味すると0・91倍だった。

 東京医科大が特定の受験生の点数を不正に加算し、女子や3浪以上の合格を抑制する得点操作をしていた問題を受け、文部科学省は医学部医学科を置く全国の国公私立大81校を対象に緊急調査を実施。近く結果を公表する方針。東京医科大も、改めて事実関係や原因を調査するための第三者委員会を設置した。

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「男子優遇?」疑心暗鬼 女子離職の懸念根底に

 東京医科大入試で明らかになった不正な得点操作について、九州の10大学は西日本新聞のアンケートで明確に否定した。九州の現役医師らの間で不正への反発が広がる一方で、「入試における男子や卒業者の子の優遇は、暗黙の了解事項だ」という声もくすぶる。背景には女性医師の離職への過度な懸念や、過疎地域の医師確保の問題が浮かぶ。

 「入試が公正に行われなければ、受験生の努力は報われない。非常識だ」。30代の女性内科医は憤る。

 九州の国立大に現役で合格し、卒業後は内科医になった。「患者の容体によっては夜間も休日も呼び出される」。自らを顧みる余裕もなく働き体調を崩した。それでも「人の役に立ちたい、能力を生かしたいという一心で医師を目指した。自分がもし得点を操作されて不合格になっていたとしたら、絶対に許せない」。

 一方、福岡県内の私立大卒の女性医師の場合、東京医科大の不正発覚に驚きはなかったという。「根拠はないが、以前から何らかの得点操作が行われているのでは、と思っていた」

 九州10大学アンケートで分かるように、受験者自体は女子より男子の方が多いが、「一般に、男子よりも女子の方が成績は良い」(九州の大学幹部)という声は少なくない。単純な比較はできないが、文部科学省の2017年度学校基本調査によると、全国の社会科学系学部や工学系学部の志願者に対する入学者の割合はいずれも女子が男子を上回ったが、医学部は男子が上だった。

 女子の合格を抑制していた理由について、東京医科大の内部調査結果は、結婚や出産を念頭に「女性医師は年齢を重ねるごとに活動が低下する」と指摘した。

 医学部専門予備校の代表は、入試が系列病院も含めたグループの“入社試験”も兼ねていると説明。「まともに採点すれば女子の合格者が多くなるが、結婚や出産で離職する可能性が高い女子は働き手として計算できないとして敬遠されてきた」と打ち明ける。

 東京医科大のように点数を直接操作しなくても、例えば男子が得意な傾向にある数学、物理の試験を難しくすれば、女子の合格率は自然と下がるという。「科目設定などで男子に優しく、女子に厳しいと評される大学は昔からある」

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 東京医科大は、卒業生の子も優遇していた。西日本の国立大学を卒業した福岡県在住の男性脳外科医は「受験生も織り込み済みのはず。必要悪だ」との見方を示す。

 過疎地域などでは医療機関が限られている。後継者不在を理由に病院の存続が難しくなれば、住民にとって影響は大きい。「医師の子どもだからといって、十分な学力があるわけではない。金を払えば合格できるのであれば、その地域にとってはプラスになる」

 さらに卒業生は母校への寄付を惜しまないといい「私立大学はいわば民間企業。ウィンウィン(相互利益)だ」と分析する。

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 医師数の不足や医療の質が問われる中、東京医科大のような不正があるとすれば「時代遅れ」との印象は拭えない。九州の国立大で働く女性内科医は「今や女性を確保しないと現場は回らない。女性差別を続けると、大学や病院は苦しくなるだけだ」と強調する。

 医師不足の問題に詳しい信友浩一九州大名誉教授(医療システム学)は「離職を理由にした得点操作は単なる問題のすり替えであり、言語道断」と指摘。女性医師の出産などを踏まえたワークシェアリングを進めることで、医療のレベルは維持できると断言する。高額寄付者の子の優遇制度がある欧米の大学も参考に「各大学は疑いを持たれないためにも、入試のルールを明確にすべきだ」と話している。

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【ワードBOX】東京医科大入試不正問題

 私大支援事業を巡り、文部科学省の前局長が東京医科大側に便宜を図る見返りに、息子を不正に合格させてもらった疑いが浮上。その他にも卒業生の子を優遇したり、女子受験生や3浪以上の男子の得点を一律減点したりしていたことが発覚した。内部調査委員会の報告書によると、少なくとも2006年度入試以降は、男子の現役受験生らを優遇する不正が行われており、背景には寄付金集めの狙いや結婚、出産を踏まえた「女性の敬遠」があったとした。

=2018/09/02付 西日本新聞朝刊=

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