カネミ油症、初の未認定者検診 40人全員に関連疑い症状確認 民間医師団、患者掘り起こしへ 長崎・五島

藤野糺委員長
藤野糺委員長
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 1968年に西日本一帯で発生した食品公害「カネミ油症」で、行政の患者認定を受けていない被害者の掘り起こしを進めるため、民間医師団が2016年から、長崎県五島市で住民の集団検診を実施している。これまでに40人を検診し、全員から油症との関連が疑われる症状を確認したという。医師団は「油症は“病気のデパート”で、さまざまな症状がある。臨床症状を重視し、患者認定を進めるべきだ」と主張する。

 カネミ油症は1968年の発覚後1年弱で、約1万4千人が皮膚症状などを訴えたが、現在までの患者認定は2322人。患者の認定基準は当初、血中のポリ塩化ビフェニール(PCB)濃度や皮膚症状などだったが、2004年にダイオキシン類のポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の血中濃度も加わった。血中濃度を重視した認定基準のハードルは高く、差別や偏見を恐れて被害を名乗り出ない人も多いとされる。

 検診は、医師団「カネミ油症奈留島健康調査実行委員会」が行い、水俣病の被害者救済に携わる水俣協立病院(熊本県水俣市)の藤野糺(ただし)名誉院長が委員長を務める。患者の多い五島列島の中で奈留島を調査地区に選んだ。藤野委員長によると、カネミ油症の未認定の被害者を対象にした民間の集団検診は初めてという。

 16年3月から住民の聞き取りを開始。油症を引き起こしたカネミ倉庫(北九州市)の米ぬか油が流通した1968年2~10月に島に住み、油を摂取した53~88歳の男女計40人の協力を得た。昨年3月には、内科医や歯科医ら21人が島を直接訪れて診察し、心電図検査や検尿などを実施した。

 医師団によると、認定患者に多くみられる皮膚の色素沈着や爪の損傷、歯肉炎などの疾患が20人以上いた。白内障や目やになどの眼科疾患も半数近くで、認定患者によくみられる症状。これらは通常よりカネミ油症患者で高い割合で出る傾向がある。今後、米ぬか油の影響のない別地域で検診し、結果を比べる方針だ。

 患者認定基準にダイオキシン類の血中濃度を「重要な所見」とする厚生労働省について、医師団の藤野委員長は「受診者には多くの症状があり、潜在的な油症患者も多いとみられる。血中濃度を基準にした診断基準は誤りだ」と指摘する。

 厚労省は「診断基準は議論を重ね、科学的な知見に基づいて作った。皮膚疾患や眼科疾患は油症と関係ない人にも出る症状。それだけで患者認定するのは難しい」としている。

=2018/09/30付 西日本新聞朝刊=

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