相次ぐ交番襲撃…現場は苦悩 安全対策に限界も 親しみやすさと両立難しく

多くの市民が訪れる福岡市・天神の天神警部交番
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 地域の治安の要である交番の安全対策をどう高めるか-。市民が交番を襲撃する事件が相次ぎ、富山市では6月に警部補が刺されて死亡し、9月には仙台市で巡査長が刺殺された。警察庁は事件のたびに安全対策を強化するよう通知し、九州の各県警も独自の対策や訓練を実施している。ただ、人員確保は一朝一夕には難しく、警備を強化すれば住民が近寄りがたく感じる懸念もある。「親しみやすさと安全対策をどう両立するのか」。現場では苦悩の声が上がる。

仙台の刺殺事件後「耐刃防護服」を常時着用

 「お金を拾いました」「エキハ ドッチデスカ」。9月のある週末、福岡市中心部の交番には日中、子どもから訪日客まで多くの人が訪れた。対応する警察官は体の前後を厚い布地で保護する「耐刃防護服」を身に着けていた。昨年までは外出時と夜間のみ着用を義務付けていたが、警察庁は仙台の事件後に常時着用を指示した。

 「防護服は重くて暑い。物々しくて住民から怖がられることもあるけど、身を守るため仕方ない」。福岡市内の交番に勤務する警察官はこう漏らした。

 警察庁は、複数人で対応できるよう勤務体制の見直しや、レイアウトの見直しを指示。本年度中には、交番内にカメラを設置し、警察署で映像を見ることができるモデル事業を一部地域で始める。拳銃が奪われないよう新型ホルダーの配備を予定した2020年度から前倒しする。

「カウンター式」机で来訪者との距離確保

 現場で対応強化にあたる九州の各県警は試行錯誤を続ける。

 福岡県警は県内の全222交番で、来訪者とある程度の距離がとれる「カウンター式」の机を採用している。交番裏の扉も常時施錠して出入り口は1カ所に限定。設備や対応を確認する「抜き打ちチェックも実行中」(幹部)という。

 同じく全交番にカウンター式机を設ける宮崎県警は机に開閉式の扉を併設し、侵入されにくい構造にしている。佐賀、大分の両県警はレイアウトを変更して死角をなくし、襲撃を想定した訓練の回数を増やした。

 識者からは机の上にアクリル板などで仕切りを設けるべきだとの指摘もあるが、佐賀県警幹部は「市民が気軽に訪問できる環境は必要。仕切りを作るわけにはいかない」と話す。

 警察庁が求める複数人での対応にも限界がある。長崎県警幹部は「他の交番員が巡回中は1人になり、常時2人以上(での対応)は難しい」。鹿児島県警も「夜間1人になる交番があるが、どうしようもない」と頭を抱える。熊本県警は、予算内での安全対策の強化には限度があるため、必要な資機材については県議会に要求する予定だ。

 「交番を襲う模倣犯が出る可能性もある。交番の良さを失わないように警戒を強めるしかない」。福岡県警幹部はこう言い聞かせた。

地域密着の良さを無くすな

 ジャーナリスト大谷昭宏氏の話 日本独自の交番制度は、市民と警察官が日常的に交流する生活に密着した存在で、治安維持にも大きく貢献している。「KOBAN」として国際語になり、シンガポールのように同じ制度を取り入れた国もある。相次ぐ襲撃事件で人命が失われたのは非常に残念だが、危険だからと“地域に開かれた”独自の良さを失ってはならない。

 交番勤務の警察官の拳銃携帯には賛否があるが、突然の襲撃に備えて所持は必須だ。柔剣道の有段者でも作業中には隙ができるため、常時2人一組での勤務が望ましい。複数人での勤務やレイアウト変更などソフト、ハード両面で対応を強化するしかないだろう。人員の確保や装備の充実のための予算を各県警レベルで確保するには限界がある。国が主導して予算確保を含めて安全対策強化に力を入れるべきだ。

=2018/10/11付 西日本新聞朝刊=

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