震災関連死却下、熊本市を提訴 遺族 精神的苦痛、賠償請求

 熊本地震の約1カ月後に亡くなった母親の震災関連死申請を却下した熊本市の説明に納得できず、精神的苦痛を受けたとして、同市東区の60代女性が、市に250万円の損害賠償を求める訴訟を熊本地裁に起こした。同地震の震災関連死を巡る訴訟は初めて。

 提訴は9月14日付。訴状や女性によると、当時80代だった母親は2016年4月の地震で車中泊などを経験。同5月下旬に自宅で倒れて亡くなった。死因は内因性急死だった。

 女性は同6月、市に関連死の認定を申請したが、市は同8月に「死亡と地震との因果関係がない」として却下。女性は市に不服を申し立て、市は今年3月、再審査をしたが「女性の母親の体調は地震前の状態に改善していた」などとして申請を再び退けた。女性は市側から納得がいく説明が得られなかったとしている。

 19日に記者会見した女性は「母は余震で眠れない状況も続き、地震のストレスが死に影響した。市町村で関連死認定基準などが違うこともおかしい」と主張した。市復興総室は「訴状の内容を精査し、対応を検討したい」としている。

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「審査、認定基準変えたい」

 熊本地震の震災関連死を巡る初の訴訟。関連死は統一の認定基準がなく、市町村ごとに認定率も異なることから、東日本大震災など過去の災害でも申請却下を不服とする訴訟が相次いだ。審査過程も詳しくは公表されず、認定されなかった遺族には不満がくすぶる。19日の会見で原告の女性は「審査や認定基準のあり方を変えるため問題提起したい」と力を込めた。

 関連死は原則、医師や弁護士らでつくる審査会が生前の診断書などを踏まえ、地震後の環境変化や持病など自治体それぞれの基準に照らして審査する。熊本県では熊本市を含む9市町村が単独の審査会、17市町村が県による合同審査会で審査し、9月末時点で214人が認定され、倍近い411人が却下された。

 「母と同じような死因で亡くなった人が他の市町村で認定されている」。女性は統一基準がないため、自治体間で認定に整合性がとれていないとして問題視。認定率も県内では最高の60・6%(阿蘇市)から全て却下の0%(玉東町など7市町村)まで開きがある。

 最初の申請から2度目の却下まで約1年半の間、市からは「母親の体調は地震前の状態に改善していた」などと説明を受けた。しかし、他市町村を含め認定審査の詳細な過程などは公表されておらず、「これでは同じ死因なのになぜ差がつくのか納得いかない」。

 一方、熊本市の担当者は「地震発生時、県に一括して審査をお願いしたが、申請が多くそれを待てずに審査会を設置した経緯がある」と説明。過程の公表は「個人情報が多く含まれる上、公表前提では円滑な論議の妨げになる」としている。

 関連死を巡り、日弁連は8月、熊本地震を含む過去の震災の事例を収集、分析し公表するよう求める意見書を国に提出した。作成に関わった弁護士は「災害ごとに状況は異なるので基準を固定化するのは弊害もあるが、事例が集まればある程度汎用(はんよう)性がある基準ができるはずだ」と指摘する。

=2018/10/20付 西日本新聞朝刊=

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