「排除の意識か」障害者募る不信 雇用水増し 「仕事は社会との接点」

多くの求職者が訪ねた障害者向けの企業面談会=8月末、福岡県久留米市
多くの求職者が訪ねた障害者向けの企業面談会=8月末、福岡県久留米市
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 中央省庁や地方自治体で明らかになった障害者雇用水増し問題は、雇用促進の旗振り役であるべき官公庁が障害者の自立や社会参加を阻害する障壁になっていた実態を浮き彫りにした。第三者検証委員会が指摘した長年のずさんな障害者雇用率の算定について、障害者や家族は「排除の意識」が根底にあったのではないかと不信感を募らせ、「障害者が働ける職場の在り方を真剣に考えて」と意識改革を訴える。

 「やっぱりな」。北九州市在住の精神障害者の男性(39)は水増し問題が発覚した際、とっさにそう感じたという。男性は2010年から6年間、障害者手帳を持たない職員の大量算入が今回発覚した省庁の一つに勤めていた。「職場で会った障害者は1人か2人。どうやって法定雇用率を達成しているのか、疑問に感じていた」

 うつ病で精神障害者保健福祉手帳を持つが、採用試験でそれは明かさなかった。疲労やミスが重なり自主退職するまで、誰にも自身の障害のことを話す気になれなかった。「偏見で仕事が制限されるのが嫌だったから」。ただ、休職した時期もあるため「自分も水増し要員に数えられていたかもしれない」と疑う。

 検証委は、民間に率先して障害者雇用を促進すべき国の機関として「意識が低く緊張感を欠いていた」としながらも故意性は否定した。しかし、男性の受け止めは違う。「障害者、特に精神障害者は扱いにくいという意識がありはしなかったか」との疑念を抱く。

 脳性まひの障害があり、車いす生活を送る福岡県大牟田市議の古庄和秀さん(46)は問題の背景に「知的障害者は字を書けないのでは、視覚障害者は字が読めないのではという、障害者を知らないことに基づく根拠のない偏見」が官公庁側にある、と指摘。人事担当職員による障害者雇用の先進企業との交流や、障害者雇用の担当部署の新設などを求める。

 「仕事が社会との接点だっただけに、今回の問題は悲しい」と話すのは、知的障害がある女性の母親(57)=福岡市在住。娘は19歳から5年ほど福岡市の嘱託職員として病院の調理場に勤めた。好きな料理に携わり、先輩からはあいさつの大切さを教えてもらった。「職場でほめられたり、反省したりして生き生きしていた」と振り返る。娘の給料で京都への2人旅をした時はうれしかった。「喜ばれる仕事をしたい」と話す娘を思うと、働くということがいかに大切かを実感する。「職場は給料のためだけでなく、多くの人と関わり合うために必要な場所。その機会を丁寧につくってほしい」と願う。

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ずさん処理、九州でも 手帳未確認や算出方法誤り

 地方自治体を対象とした厚生労働省の障害者雇用の実態調査(昨年6月1日時点)では、九州でも大分県教育委員会などで水増しが判明。中央省庁と同様、障害者手帳の所持を確認しないなど、ずさんな処理が行われていたことが改めて浮き彫りになった。

 大分県教委は163・5人雇用していた障害者のうち60人が水増しだった。採用後、障害者となったと申告した職員を数えていたが、実際は手帳を持っていなかった。その結果、法定雇用率は当時の基準値2・2%から1・39%に下がった。担当者は「厚労省の通知が『原則として』手帳を確認するようにとしていた点を、自己申告でもいいと拡大解釈していた」と釈明。

 また、長崎県は22・5人、同県教委は55人、それぞれ手帳を持たない人を障害者として算入。6人を水増した熊本市は「手帳の返納などを毎年確認すれば防げたミスだった」として故意性を否定した。

 長崎県佐世保市は雇用率を計算する際、障害者数を割る「分母」に、1年以上勤務の非常勤職員594人も加えなければいけなかったのにしていなかったため、雇用率が2%台から1%台に落ちた。

=2018/10/23付 西日本新聞朝刊=

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