生徒の7割が不登校経験 成長待ち続ける…校長の信念 福岡の高校

生徒に卒業証書を渡す立花高校の斎藤真人校長(左)=1日、福岡市東区
生徒に卒業証書を渡す立花高校の斎藤真人校長(左)=1日、福岡市東区
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 25日公表された文部科学省の調査で、2017年度の全国の不登校の小中学生は約14万4千人となり、5年連続で増加した。そんな中、不登校経験者を多く受け入れ、卒業後の就職や進学につなげている高校がある。福岡市東区の私立立花高。同校を訪ねると「できないことを嘆くより、できていることを認めよう」という教育方針の下、生徒たちの一歩を待ち続ける教師たちの姿があった。

 10月1日、立花高では9月までに必要な単位を修得した生徒のための秋の卒業式が行われた。

 斎藤真人校長(51)は祝辞を述べた後、9人の卒業生一人一人の名を挙げ、壇上から声を掛けた。「1年のときからバイトを一生懸命頑張ったね」「真っすぐで素直だから苦労することもあるけど、そのままのあなたでいてください」-。そして感極まった表情で締めくくった。「卒業証書を返してもいいんだよ。そしたらまた君たちと一緒にいられるから」。会場からは、かすかな笑い声とすすり泣きが聞こえた。

 卒業生を見送った斎藤校長は式を終え、なおも言う。「あの子たちがいとおしくてたまらんとですよ」

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 同校の1学年の定員は150人。入学する約7割は中学時代に不登校を経験している。地元の一部では「入試で名前を書けば合格する高校」とやゆされることもある。斎藤校長は「それは事実。でも、生徒たちが入試といえども学校に来るのがどれだけ大変か分かりますか」と表情を硬くした。

 入試当日の朝、決まって職員室の電話が鳴る。「子どもが緊張して玄関で動けなくなった」「布団から出られなくなった」。教師は落ち込む親たちに「入試の機会は何度でもあります。いつまでもお待ちしています」と説明する。

 試験会場で無事に入試が始まるのを見届けると、斎藤校長は付き添いの親たちが待つフロアに向かう。「お子さんたちは、ちゃんと答案用紙に名前を書いていますよ」と伝えると、安心して泣き崩れる親もいるという。

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 同校では、一般の教室で学ぶのが難しい生徒が通える校内の「サポート教室」や、公民館などに教諭が出向く「学校外教室」などの仕組みを設けている。

 不登校の要因は、家庭環境や友人関係の悩みなどさまざま。同校の浜本秀伸主幹教諭(39)は「学校に来られるまで何年もかかる生徒もいる。大事なのは、きっかけを与え続け、待ち続けることです」と話す。

 3年の男子生徒の母親(50)は「中学時代は『なんで学校に行けないの』と息子や自分を責めていた。立花高で、ゆっくりでいいんだと受け入れられて楽になった」と振り返る。

 04年に立花高に就職する以前、宮崎県の公立中教師として「ゴリゴリの生徒指導」を続けていたという斎藤校長は「厳しい教育を否定する考えはないけど、成長を待ち続ける教育がもっと広がってもいいと思う。うちで巣立った生徒たちが社会をおおらかに変えていける、そんな信念を持っていたい」と語った。

【ワードBOX】不登校児童生徒の支援

 不登校の子どもたちが安心して学べる環境づくりを国や自治体の責務とする教育機会確保法が2017年2月に施行。不登校について学校を相当期間欠席し、集団生活に関する心理的負担などで就学が困難な状況と定義し、休むことの必要性を認めている。立花高校は普通科・全日制として原則3年で卒業するカリキュラムを組むが、単位制も採用し、3年以上をかけて自分のペースで学ぶことができる。就職を希望する卒業生には、就労支援施設などと連携して自立支援の取り組みも行っている。

=2018/10/26付 西日本新聞朝刊=

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