阿久根「改革」三たび対決 16日告示・現職と前職一騎打ちへ 市分断の記憶よぎる

竹原信一氏が市長だった時代のアート事業で描かれた絵が外壁などに今も残る阿久根市役所
竹原信一氏が市長だった時代のアート事業で描かれた絵が外壁などに今も残る阿久根市役所
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 鹿児島県阿久根市長選が16日告示される。3期目を目指す現職の西平良将氏(45)と返り咲きを狙う市議で前職の竹原信一氏(59)が立候補を表明。市長リコール(解職請求)に伴う2011年1月の市長選から3度目の一騎打ちとなる見通しだ。08年、市長に就任した竹原氏の「改革」は、地方自治や議会の在り方を問う契機となり、全国的な注目を浴びたが、政治手法については独善的との批判もあった。市長交代から約8年。人口減、高齢化と多くの九州の自治体に共通する課題を抱える阿久根市、疲弊の中で民意はどこに向かうのか-。

 「議会はお芝居」「安定とは癒着のこと」。今月6日、竹原氏は記者会見で持論を展開、「私が市長をしないとおかしな方向へ行く」と訴えた。

 竹原氏は市長を務めた2年半、官民格差の是正を旗印に、職員ボーナス半減や議員報酬の日当制導入、ごみ袋代や保育料の値下げなどを実施、評価する市民も少なくなかった。一方で、議会に諮らず市長の専決処分で次々と施策を断行、知事の是正勧告に従わないなど、強硬な手法が議会や住民の反発を受け、市長不信任、議会解散、出直し市議選、市長リコールと11年の市長選で敗北するまで混乱が続いた。

 14年の前回市長選は遊説や街頭活動はせずポスター掲示だけの異例の選挙戦で4510票を獲得。敗れはしたが得票率は約37%で根強い支持をアピールした。翌年は市議選に出馬。2位と約1500票差の2371票を集めトップ当選を果たした。今回は事務所を構え選挙カーも走らせる予定で「本格的に運動し当選を狙う」(支援者の畜産業男性)と陣営も力が入る。

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 「8年前の市政に戻してはいけない」。9日にあった西平氏の決起集会で、支援者は竹原市政復活への危機感を訴えた。西平氏は「議会と正々堂々と議論できる関係になった」と市政正常化を強調。壇上には竹原派だった2人の市議の姿もあった。ただ、ある市議は「現職への不満もくすぶっている」と明かす。

 市の人口は約2万600人で10年前から約3千人減少。九州新幹線のルートから外れ、肥薩おれんじ鉄道阿久根駅の乗降客は04年度の約36万人から17年度約26万人まで減った。基幹産業の水産業も衰退。山積する課題を前に、「変化」を求める市民も少なくない。水産会社社長でかつて竹原氏を支援した松岡徳博さん(64)は「竹原時代はいろいろあったが、あの頃より街の活力は落ちているのも事実」と話す。

 竹原氏は市長時代、ブログを駆使して議会やマスコミを批判。その姿をトランプ米大統領に重ね「閉塞(へいそく)感を打ち破る変革を求めて竹原氏にもう一度託してみようと民意が動くかもしれない」と西平氏支持の不動産業男性(79)は警戒する。松岡さんは「あの混乱期に戻したくないが、現状も変えたい。選択肢がないのが本音」と打ち明ける。

 分断された街では親族間でもいがみ合いが起きた。元竹原派市議で飲食店経営の松元薫久さん(42)は、今では西平氏の支援者とともにイベントなどに参加し「ぎすぎすした雰囲気は薄れた」と語る。混乱を経て10年前にはなかったまちづくりの動きが出ているとも指摘した上で要望した。「阿久根は今、本当に重要な時期にある。しっかりと地域の青写真を示し、みんなに考えさせてくれるリーダーを渇望している」

=2018/12/14付 西日本新聞朝刊=

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